若くして結婚し苦労した夫婦。娘から23年越しの新婚旅行をプレゼントされ号泣
結婚は人の一生における大きな節目のひとつですが、全員が披露宴や新婚旅行をできるわけではありません。
今から23年前、女の子を出産した風見彩音さん(仮名・42歳/販売員)は当時19歳。本人にとっては想定外の妊娠で、そのために美容師専門学校の中退を余儀なくされたといいます。

「今でこそ授かり婚なんて言われてますが、私のころはできちゃった婚と呼ばれていた時代。しかも、住んでいたのは地方だったので陰口も叩かれましたし、すごく肩身の狭い思いをしました」
相手は同じコンビニでアルバイトをしていた2歳年上の大学生。2人は結婚・出産を決意しますが、彼の両親は大反対。それでも聞き入れなかったために絶縁を言い渡され、和解するまでの約10年間は一切交流がなかったそうです。
「ウチは反対こそはされませんでしたが、母子家庭で幼い弟もいたので経済的な援助はほとんど受けられませんでした。もちろん、結婚式も新婚旅行もなし。友達がちょっとしたお祝いパーティを開いてくれた程度です。
2人合わせても貯金が数万円しかない状況からのスタートで頼れるところもなく、私も臨月近くになるまでアルバイトを続けていました」
彼は大学を中退し、建設会社に就職。現場作業員として働きながら家族を支えてくれましたが生活は苦しく、子供が幼稚園に入るまでは親子3人でワンルームのアパート暮らし。
その後、中古ながらも一戸建てのマイホームに引っ越しましたが、「子育てや日々の生活に追われて精一杯だった」と振り返ります。
「でも、娘も昨春大学を卒業して社会人となり、ようやく親の責務からは解放されました。
主人も今は現場勤務ではなく管理職なので工事現場に長期出張に行くこともなくなり、2人で旅行したりのんびり過ごそうかって話していたんです。実は、それまで2人きりで泊まりの旅行をしたことが一度もなかったので」
そんな風見さんが夫と旅行の話で盛り上がっていた昨年のある日、就職した娘さんが週末を利用して帰省。そこで「今までお世話になったお父さんとお母さんに旅行をプレゼントしたい」と言われたそうです。
「娘からの23年越しの新婚旅行の贈り物に私も主人も涙腺が崩壊。それを見ていた娘もウルウルきちゃって、最後は親子3人で泣いていました(笑)。でも、あんなにうれしい涙を流したのは生まれてはじめてのことでした」
ちなみに旅行先は、彩音さんが昔からずっと行きたいと思っていたイタリア。娘さんは両親の新婚旅行の費用を捻出するために給料から家賃や生活費などを除いた分のほとんどを貯金していたといいます。
「最初は往復ビジネスクラスの高いツアーを提案されましたが、娘が自分で汗水流して稼いだお金です。さすがに全部は使えないと主人と話し合い、安いツアーに行かせてもらうことにしました。それでも初めて訪れたローマやベネチアは想像していた通り、とっても素敵で一生の思い出になりました」
最愛の娘さんのおかげで新婚旅行という夢を叶えることはできましたが、2人はまだ結婚式を挙げていません。彩音さんも「披露宴をやりたいとは思いませんが、ウェディングドレスはやっぱり一度は着てみたい」と願望を口にします。
「世間的にはアラフォーのおばさんですけど、やっぱり憧れとかあるじゃないですか。今後コロナが落ち着いたらならば…と主人とハワイ旅行をいつかしたいねと話しているのですが、写真だけでも撮りたいなと。
娘にそのことを話すと、『私も一緒にお祝いする!その時は会社も有給取って休む!』って言い出しちゃって。すごくうれしいですけど、本当は主人と2人きりで過ごしたいなって(笑)」
若くして結婚、出産を経験して苦労を重ねましたが、今も夫婦仲、親子関係が良好なのはある意味スゴいこと。こんな素敵な家族になりたいものですね。
―シリーズ「思い出深いギフト」―
<文/トシタカマサ>

写真はイメージです(以下同じ)
親子3人ワンルームアパートで苦しい生活

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次は旅先でウェディングフォト撮影を
トシタカマサ
ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。