「温水洗浄便座」は毎回使わないほうがいい。正しいタイミングは?
今や公衆トイレにも設置されている温水洗浄便座。洗浄シャワーを使用すればペーパーで拭くよりも清潔感があり、排便のたびに使用しているという人も少なくないようです。ただ、「使いすぎると痔になる」「便秘の時は洗浄シャワーで排便を促すといい」など真偽不明のウワサも。
そこで、日本初の女性肛門科専門医でマリーゴールドクリニックの院長・山口トキコ先生に、温水洗浄便座の正しい使い方について伺いました。
ここ10数年ほどでメジャーになり、愛用者も多い温水洗浄便座の洗浄シャワーですが、山口先生は「いい便が出たときは肛門周辺もそれほど汚れないので、ペーパーだけできれいに拭き取れていれば、排便のたびに使用する必要はありません」といいます。おしりのトラブルで受診する患者さんに対しても、医師が洗浄シャワーの使用を推奨することはないそうです。
ただ山口先生曰く、「緩い便が出たときは、洗浄シャワーの使用が望ましいときもあります。緩い便は肛門周辺が汚れやすく、きれいに拭き取るためには何回もペーパーで拭くことになって過度な刺激を与えてしまうため、かゆみやかぶれの原因になることがあります。そんな時洗浄シャワーを使えば、ペーパーでおしりについた水滴を取り除くだけでよくなり、拭き過ぎを防げる」そうです。
また、山口先生は「痔で悩んでいる人からも、シャワートイレによるメリットを上げる声が聞かれました」といいます。
「便がつくと痔が刺激され、痛みを伴うことがあります。特に辛い物は食べるとそのまま便となって出てくるので、辛み成分が強い刺激となります。そのため、『洗浄シャワーできれいにできてよかった』という患者さんは多いです」(山口先生)
イボ痔の患者さんからは、「これまで排便のたびに、飛び出てきたイボを指やふろ場のシャワーで押し戻していたけれど、洗浄シャワーでイボをスムーズに戻せるようになった」との声もあったそうです。
とはいえ、イボを洗浄シャワーで戻すのは、温水洗浄便座の正しい使い方ではありません。同様に、「便秘の時に洗浄シャワーで排便を促す」というのも「温水洗浄便座の目的ではなく、正しい使い方ではない」と山口先生は忠告します。間違った使い方は思わぬトラブルの原因にもなりかねないので、注意が必要です。
そこで気になるのが、温水洗浄便座の正しい使い方。山口先生に伺ってみたところ、医師としての観点では、次のような使用方法が望ましいとのことでした。
・緩い便が出たときなど肛門周辺が汚れたときだけ使用する
・かゆみなどがあるときは使用しない
・洗浄シャワーで洗うのは、肛門の中ではなく周囲のみ
・水温は、熱すぎず冷たすぎず、人肌くらいの温度
・洗浄シャワーの強さは強すぎないように
・あてる長さは10秒くらいでじゅうぶん
洗浄シャワーを強い勢いであてたり、1分2分と長時間使用したり、肛門の中まで洗っていたという患者さんの中には、直腸に水が溜まってあとから漏れてきた人もいるとのこと。
「お風呂でも洗いすぎたり長湯をすると、肌が乾燥してかゆくなりますよね。おしりも同じで、洗いすぎや長時間の使用はよくありません。何事もやりすぎは禁物。温水洗浄便座も正しく適度に使ってください」と山口先生。かゆみがあるとついあてたくなりますが、おしりに違和感があるときは洗浄シャワーの使用を控えた方がいいそうです。
洗浄シャワーは毎回使うべき?
温水洗浄便座の正しい使い方
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