中川沙也加さん(仮名・32歳・主婦)さんは年初からスポーツクラブに通い始めました。
「昨年からじょじょに太りだして、なかなか元の体重に戻らないんです。服もきゅうくつになってきてしまったし、思い腰を上げて隣の駅にあるスポーツクラブに入会したんですよ」
そして、クラブに通いだして2日目。サイクリングマシンをこいでいると、ある女性に声をかけられた沙也加さん。
「『わ、沙也加久しぶり!覚えてる?』と言われて振り返ると、なんと高校の時に同じクラスだったN美さんがいたんですよ。あの頃と変わらないスレンダーなスタイルで」
当時、N美さんはクラス内ヒエラルキーのトップで、美人でスタイルも良かったため、とても目立つ存在でした。一方、沙也加さんは下位の地味グループで、その頃の2人はほとんど話した事が無かったそう。
「まさかN美さんが、私の事を覚えていてくれたなんてと驚きでした。しかも、地元の長野県じゃなくて…まさか東京でこんな風に会うなんて、すごい偶然だなと思いましたね」
N美さんの提案で、近所のカフェに一緒に行く事になり2人は更衣室に向かいました。
「そしたら、着替えている私を見て『そんな大きなブラジャー、普通にデパートとかで売ってるの?』と聞いてきたので、私が太っている事をいじっているのかなと思いましたが…N美さんは悪気なさそうな表情だったので、とりあえずスルーしたんですよ」
そして、カフェに行き注文を済ませる2人。
「N美さんにクスクス笑いながら『やっぱ沙也加は、パンケーキセットだよね。炭水化物好きそうな体型してるもん』って言われて。その時に、あぁやっぱりデブいじりされてるんだと確信しました」
さらに、沙也加さんの夫の職業を聞いてきたので「会社員で営業をしている」と答えると…。
「勝ち誇ったように『うちは歯科医師なんだよね』って延々と自慢話が始まって。あぁきっとN美さんは今もあの頃と一緒で、自分の方が上なんだとマウントをとるために私を誘ったんだと思いました」
一通り話を聞いて、逃げるように帰宅した沙也加さん。
「何が悲しいって、悔しいですが私もあの頃のまま変わっていなくて、N美さんの自慢話にヘラヘラ相づち打ったりして…ホント嫌になりますよ。もう関係ないんだからピシャッと言ってやってもいいのに」
ですが、やはりN美さんが怖い沙也加さんはスポーツクラブを退会したそうです。
―シリーズ「
忘れられない出会いと別れ」―
<文&イラスト/鈴木詩子>
⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】鈴木詩子
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:
@skippop