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新卒でブラック企業に入社「歯を見せて笑うな」社長の思いつき命令が次々と…

 就職が内定していた企業の人事課長からパワハラを受け、大学4年の男子学生が入社2カ月前に自殺したと遺族の代理人弁護士が9日に会見を行い、そのひどいやり口が話題になっています。
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写真はイメージです(以下同じ)

 入社前の学生にとって、企業のやり方に疑問をもったり、内定辞退をして別の道を探すことは大変難しいのが実際です。  実際に新卒でそのままブラック企業に入ってしまったという女性に話を聞いてみました。

リーマンショック後の厳しい就活でなんとか内定したが…

 山手線の内側にある小さな印刷会社――。都内の四年制大学を卒業後、エミさん(仮名・32歳)が入社したのがその会社でした。  リーマンショックの影響があったからか、就活はとにかく厳しかったと語る彼女にとって、正社員として内定がもらえただけでも御の字。入社後は営業部に配属され、ルート営業を中心に新規案件獲得のための飛び込み営業をすることになりました。  そのなかでわかってきたことは、印刷代が同業他社より高いということ。加えて、得意先から「色が悪い」と刷り直しを要求されることもしばしば……。飛び込みで営業をかけながらも、自社の印刷が「高かろう悪かろう」であることが頭をよぎり、営業先に強くアピールできるものがないことに頭を悩ませていました。  それは先輩同僚も同じ気持ちで、「飛び込むことに意味があると思うしかないよね」と諦めモード。  いつでも成績が芳(かんば)しくない営業部に檄を飛ばすのは社長でした。ひんぱんに社員の様子を見て回り、目についた社員へ数字が未達の理由を問いただすのです。

「社内では歯を見せて笑うな」社長の思いつきで

「みんなシーンとしてましたね。長いと1時間くらい捕まって叱責され続けるんですが、そのあいだ仕事はできないし、空気は悪くなるし、最悪でした。怒鳴ったり、机を叩いたりするんです」  あるときのこと、毎週の定例会議で社長からあるルールが発令されました。それは、「社内では歯を見せて笑うな」というもの。 「『目標も達成できないのにお前らよく笑えるな!』という話から、思いつきで決まったものでした」  社員たちはルールにのっとり、どうしても笑うときは口を閉じて笑うようになります。 「ちょっとした雑談するときも、歯を見せて笑わないように、みんな口を閉じて笑うんですよね。不自然な光景がかえって面白くなっちゃうこともありました。笑い方までルール化されるなんて、すごい会社だなと思いました」 笑ってはいけない

「新規案件がとれるまで帰社するな」で業務に支障が出た

 それからしばらく経ち、相変わらず誰も新規案件がとれない状況が続くなか、新たなルールが追加されることに。 「『新規案件がとれるまで帰社するな』っていうルールです。でも、ルート営業先の動いている案件があるので、当然社内での作業も必要で……」  新ルールが発令された日から、社長が退勤したかどうかを社内の事務さんに電話して確認することがエミさんの仕事になりました。 「社長は大体20~21時に帰るんです。帰ったのを電話で確認したら、他の営業さんたちにもメールで知らせて帰社します。帰社したら、社内でないとできない雑務を一気にやって、なんとか終電に間に合わせる」  もしも終電に間に合わない場合は社内に寝泊まりし、翌朝社長が出勤する前に会社を出るようにしていたとのこと。こんな無茶な社長命令を守ったからと言って、新規案件がとれる保証もありません。そればかりか、業務に支障が出る一方。 「ほとぼりが冷める頃を見計らって、みんな徐々にいつものやり方に戻していっていました。社長も飽きてきて、しつこく言わなくなっていくんです。で、また社長が思いつきの無理なルールを社員に押し付ける。その繰り返しでした」 ブラック会社で働き疲れ果てた女性
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当時は「どこの会社もこんなもの」だと思い込んでいた
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