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蜷川実花の新ドラマに「昭和の価値観」と批判の嵐…蜷川実花にイラつく8つの理由

8.とにかくあの派手な色が苦手感

 これはもう趣味でしかなく、過剰な極彩色の色味が苦手な人はいると思う。
『蜷川実花になるまで』 (文春文庫)

『蜷川実花になるまで』 (文春文庫)

 以上、8つにまとめてみた。おもしろいのは、偉大なる父親と比べられることを避けてきた蜷川実花が、父・幸雄がアングラから商業演劇に活動の場所を移したとき、演劇界から孤立し、演劇界の評論家たちから認められない時期があったいう意外な過去をうっすらなぞっているように見えることだ。  蜷川幸雄はそのとき演劇以外の評論家やライターに助けられたとよくインタビューで振り返っている。蜷川実花の味方は圧倒的に、強い言葉をもたない、キレイやかわいいが大好きで難しいことを考えない一般層である。 「FOLLOWERS」には「汝(なんじ)の道を進め。そして人々をして語るに任せよ」というセリフがあり、これが蜷川実花の信条であろうと考えると、自主的に孤高の生き方を選んでしまう性分なのだと思える。これからも、誰に何を言われても自分を曲げないにちがいない。それがまた苛(いら)ついて、批判が出る。その繰り返しもエンターテイメントなのかもしれない。  より良い世の中を求めて、時代のアップデートを見つめていく知的エリートたちが、旧さを理由にひとりの女を責める構図に私は、旧世代の没落したお金持ちと新世代の労働者の哀しい対立のなかで狂気なまでの己の夢に生きるヒロインを描いた「欲望という名の電車」を思い浮かべる。蜷川実花にはいつか「欲望という名の電車」を撮ってほしい。 <文/木俣冬>
木俣冬
フリーライター。ドラマ、映画、演劇などエンタメ作品に関するルポルタージュ、インタビュー、レビューなどを執筆。ノベライズも手がける。『ネットと朝ドラ』『みんなの朝ドラ』など著書多数、蜷川幸雄『身体的物語論』の企画構成など。Twitter:@kamitonami
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