新型コロナ爆発のパリで…81歳の日本人パリジェンヌ“不安との付き合い方”
新型コロナウイルスの影響で、閉塞感の漂う毎日が続いています。
新しいことを始めたい! 友人と旅に出たい!と胸弾む季節なのに、今しばらくの我慢を強いられそう…。
フランス・パリでは、外出には申請書が必要で、日用品の買い物には一定間隔をとって行列したり、時間差で入店したりと、厳しい状況下にあるようです。
3月29日午後2時(日本時間)時点で、フランスは新型コロナ感染者が3万7575人、死亡者が2314人という深刻な状況です。
パリ在住54年目の弓・シャローさん(81歳)はどんな日々を送っているのか、話を聞いてみました。
パリが教えてくれたボン・シックな毎日』を上梓。その際に、波乱万丈のその人生と楽しいアイデア満載の暮らしぶりが話題になった人です。元デザイナーらしいセンスの良さと、若々しく美しいルックスも、「奇跡の79歳!」と注目され、広く知られるところとなりました。
その弓さん、今年3月26日には3年ぶりに『100歳までパリジェンヌ!』を刊行しました。
パリ郊外に住む弓さんは、
「街中はほとんどのお店が閉まっていて、人の姿はほとんど見かけず、ゴーストタウンとなっています。お料理が好きで、いつも素材や常備菜をストックしていてるのでいまのところわが家は、冷凍庫も冷蔵庫も満杯。ありがたいことにちょうどお米も10キロ購入したばかりでした。
ただ、この状況がいつまで続くのかはわかりません。今後については夫のクロードが、買い物はインターネットでしようと言っています。運動不足で脚が衰えないように、最近ではYouTubeで見つけたラジオ体操を始めたり、わが家に併設するマンションの屋上を開放して、ほかの部屋の方々にも外の空気を吸っていただいたりしています」(弓さん、以下同)
81歳と80歳のご夫婦は、どうやら二人で工夫をしながら、がんばっている様子。
自分たちの生活のペースを守りつつ、有事にも対処する柔軟さの秘訣を聞いてみました。
「そうね。まずはむやみにイライラしない、怒らないことかしら…」
「私ね、自分は、どちらかというと、ひとさまのお役に立てることなら、面倒がらずに引き受ける方だし、せっかちだけれど、すぐに怒りを爆発させない方だと思っていたの。
でも、あるとき知人に頼まれごとをされて、それがあまりにも安易でこちらの予定を考えないものだったので、頭に来てしまいました。結局、友人の依頼はお断りしたのですが、その後、数日の間、ずぅーっとイライラを引きずっていました。断ったことや自分のイライラへの自己嫌悪も重なって、珍しく気持ちが落ち込みました…」
しまいには具合が悪くなって、かかりつけのクリニックを訪ねたといいます。普段はいたって健康血圧・脈拍なのに、両方とも急上昇していて、医者にも驚かれ、いたく心配されたとか。
「よく高名なお坊さんや心理学者の方が『怒りはよくない』と本の中で書いていらっしゃいますが、あれ本当よね。イライラや怒りは誰のためでもなく、自分のためによくないのだなと、この身をもって知り、反省しました」
弓さんは続けて、
「周囲を見ていても、人は未知のものや自分の常識や感覚とは異なるものに出合ったとき、心の中が不安や怒りやイライラでいっぱいになってしまうようです。でも、そんなネガティブな気持ちは心の中でどんどん大きく育っていきがち。それは自分の体をむしばむことにもつながると思います」
では、そんな気持ちには具体的にどう対処すればいいのでしょう?
「単純ですが、夢中になれるものを探すことだと思います。家中の整理整頓をするのもよし。掃除をするのもよし。読まないまま置いていた本にとりかかるのもよし。あえて手のかかる料理に挑戦するのもいいでしょう。私は普段から好奇心旺盛ですが、こんな気持ちになったら、さらに自分の好きなこと、やってみたかったことに無心に取り組むようにしています」
80歳を過ぎても、好奇心を忘れず、学ぶ姿勢も忘れない弓さん。
新刊は、弓さんと夫のクロードさんが自分たちの日常を日記のように写してきたプライベート写真と、弓さんのウイットに富んだエッセイで綴られます。
ページのあちこちから、「日々の暮らしを大切にすること、楽しむこと、おしゃれに年を重ねること」の意味を教えてくれる感じがします。
時に「もう〇歳だから…」と引っ込み思案になっている女性の背中を押し、時に一人ですべてを背負い込み頑張りすぎてしまう女性をそっと包み込む…。弓さんの本には、読者に優しく寄り添いながら、言い切るべきところはきっちり言い切る頼もしさがあるのです。
軽快な文章には、81年の人生が紡ぎだす、女性たちへの珠玉のエールが込められています。
【弓・シャロー(YUMI CHARRAUT)さんプロフィール】
1938年、東京麻布生まれ。曽祖父は東京慈恵会医科大学を設立した男爵の髙木兼寛という家系で育つ。田園調布雙葉学園卒業後、女子美術大学に進学。並行してセツ・モードセミナーでも学ぶ。1966年、渡仏。結婚、出産。「プチバトー」のデザイナー他ファッション関連の仕事に従事。著書に『パリが教えてくれたボン・シックな毎日』、最新刊に『100歳までパリジェンヌ!』がある。
<文/女子SPA!編集部>
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弓さんは、3年前、著書『