「不安な気持ちで母親を待っていると、満員のロビーに子供を4人連れた若いお母さんがいたんですよ」
まだ1歳未満の赤ちゃんを長椅子に寝かせて、4歳ぐらいの女の子がスマホで動画を見ている両脇に、双子らしき2歳ぐらいの男の子2人が座り、その画面をのぞいていたそう。
「するとその若いお母さんが名前を呼ばれたみたいで、4人の子供を置いて診察室に行っちゃったんです」
すぐさま泣き出す赤ちゃん。静かなロビーに泣き声が響いていますが、お姉ちゃんと男の子達は携帯の動画に夢中で、まるで無視の様子…。
「大丈夫かな?と気になりましたが、母親が戻ってきたので診察結果が気になり話し込んでいたんです」
すると今度は、双子の男の子達がロビーを走り回り出し、その1人が椅子によじ登ると、足をすべらせたのか顔面から床に落ちてしまいました!
「ゴンっとニブい音がして、ギャー!と泣くその子の口の中を見たら真っ赤で『わ、血が出てる』と思い、私はあわてて駆け寄ったんです」
泣いている男の子に「大丈夫?」と抱き上げて椅子に座らせていると…。
「あなたコロナじゃないでしょうね?あっちへ行って!」
「その子のお母さんが診察室から戻ってきて『何するんですか?うちの子に触らないで下さい!』とにらまれたんですよ」
すると近くに座っていた女性が、仲裁に入ってくれて今までの経緯を説明してくれたそう。
ですがその女性の興奮は収まらず『頼んでないし!余計な事しないで下さい。ていうか、あなたコロナじゃないでしょうね?あっちへ行って!消毒、消毒しないと』と言って、病院に設置されているアルコール消毒液の方にその子を連れて行ってしまったそう。
「あまりの事にビックリして固まってしまいました…ですが私もこのご時世、うかつに人様のお子さんに触るなんていけなかったのかもしれません。私が今、コロナに感染していない保証なんてないですし」
子育て・病気の上にコロナへの不安で、攻撃的になってしまうのかも
慣れない大きな病院と満員電車、そしてこの出来事にクタクタに疲れてしまった紗奈さん。
「きっとあの若いお母さんも4人の子育てと、自分も病院にかかっていて大変な上に、コロナに対する不安もあって、あんな風になってしまうのもわからなくはないですが…正直とても怖かったです。でもこれからは気をつけなくちゃと思いましたね」
ちなみに紗奈さんの母親は、舌ガンでも何でもなかったそうで、その後この大学付属病院に行く事はありませんでした。
世界中がコロナストレスでギスギスしている今、お互いに寛容でありたいものです。
<文&イラスト/鈴木詩子>
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漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:
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