コロナで外出禁止令の国に住む駐在員妻。息苦しい中の楽しみとは?
法的な強制力がなく、あくまでお願いという自粛要請であることから「対応が甘い!」と諸外国のメディアから批判を集めている政府の非常事態宣言。
「本当なら4月13~15日は、ソンクラーンと呼ばれるタイ正月の時期なんです。街では水かけ祭りが行われたり、一年でもっとも盛り上がる時期なんですけどね」
残念そうに話すのは、夫婦でタイの首都バンコクに暮らす水野芳香さん(仮名・33歳/専業主婦)。駐在員の夫は、3月中旬から自宅待機となっていましたが、帰国を命じられることはなかったそうです。
「夫には『日本には戻ったほうがいいんじゃない?』と言われましたが、私たちにはまだ子供もいませんし、ずっと家に1人ぼっちじゃさみしがると思って。それで私もそのまま残ることにしたんです」
タイでは3月26日から非常事態宣言が発令されていますが、その前からスーパー以外の大型商業施設や娯楽施設は閉まっていたとか。
「カンボジアやマレーシアなど隣国との国境もすべて封鎖。空路での外国人の入国も事実上の禁止となって、日本では想像できないくらいの厳戒態勢に驚きました。
ただし、この時点でも現地の一般市民に対しては、あくまで外出自粛を呼びかける程度でした。それでもさらに厳しくなるであろうとの想像はでき、スーパーからマスクだけでなくトイレットペーパーなどの品切れも起きていました。
私は食料品や生活雑貨は普段からまとめ買いをしていたので慌てて買い込むことはなかったですが、夫が毎日愛飲してる地元のチャーンビールは大量に購入しました(笑)」
すでに外出は必要最小限に抑えていましたが、4月3日からは夜10時~翌朝4時まで外出禁止に。違反すれば2年未満の禁固刑や4万バーツ(約13万2700円)の罰金、もしくはその両方を科せられるようになったといいます。
「夜が本当に静かで別の街みたいです。いつもは夜ふかしして日本のテレビ番組を見ていましたが、最近は1日中家にいるせいか2人とも10時には就寝。朝6時には起きる日々です。8時間睡眠なんて子供のとき以来ですが、引きこもり生活をしている割には身体の調子も悪くありません」
でも、自宅待機の夫と24時間一緒に過ごすってどうなのでしょうか。実際、それで夫婦仲が険悪になったケースも聞きます。
「それがないんです。自宅は2LDKのコンドミニアムで1人の時間もお互い確保できますし、家事も夫が『ヒマだから』って自分で掃除や洗濯、料理をしちゃうんです。あっ、だから私が退屈で仕方ないっていうのはありますね(笑)」
そんな芳香さんにとって数少ない楽しみが近所に並ぶ屋台メシの購入。その場で食べることはできなくなりましたが、テイクアウト専門として営業を続けており、「近所の屋台をコンプリートしそうな勢いです」と笑う。
「私はグリーンカレーとカオマンガイ(チキンライス)がお気に入りで、夫はガイヤーン(タイ風やきとり)や空心菜炒めなどビールのおつまみになりそうなものをいつも買ってます。
面白いのは汁モノをビニール袋に入れて渡されるので、見た目がちょっとグロいこと。最初は抵抗があったけど、すごく美味しいし、1食300円程度で家計にも優しいから助かってます」
また、コンドミニアムの隣部屋に同じ世代の駐在員夫婦が住んでおり、夫以外の話し相手がいることも大きいようです。
「ほかの友達は違うコンドミニアムに住んでいて会えないため、すごく助かっています。お笑い系のDVDをたくさん持っていたので彼女と鑑賞したり、借りて夫と見たりしています。いつ以前のような日常に戻れるかわからないからこそ、笑って過ごさなきゃって思うんです」
ロックダウンによる息苦しさを感じつつも、なんとか明るく過ごそうと務める芳香さん。こんな時だからこそ楽しく過ごすことを心がけたほうがいいのかもしれませんね。
<文&写真/トシタカマサ>
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これに対し、海外では刑罰を伴う都市封鎖(ロックダウン)を実施している国も少なくありません。
夫は3月中旬から自宅待機
外出禁止で夜10時には寝る生活に
お笑いDVDが処方箋代わり
トシタカマサ
ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。





