NHK『大奥』、冨永愛と三浦透子のガチンコ芝居にただただ涙があふれた
NHKドラマ10、男女逆転『大奥』も残すところ14日(火)の最終話の放送を残すのみとなった。第9話では、将軍・徳川吉宗(冨永愛)らによる、江戸市中に発生した赤面疱瘡との戦いとともに、次期将軍候補をめぐるエピソードが描かれた。幼き頃から吉宗の<将軍としての器>を信じてきた右腕・加納久通を演じる貫地谷しほりの迫力や、吉宗の長女で、言語・排尿障害のある家重を演じる三浦透子と冨永との名シーンが強く残る回となった。
本作における大奥は、絢爛豪華な鳥かご、ひいては牢獄にも見える。そのことは、3代将軍家光(堀田真由)、そして綱吉(仲里依紗)の物語に痛いほど伝えられてきた。だが紀州藩主として、外から将軍として迎えられた吉宗には、そうした悲壮感はもともとなかった。しかし、男女逆転『大奥』の世界観のひとつといえる「幽閉された」空気を、もっとも表すキャラクターが第9話で登場した。吉宗の嫡子(長女)、家重である。
その本編登場より遡ること7年。江戸市中で赤面疱瘡が発生した。吉宗の命のもと、水野(中島裕翔)がたどり着いた猿の肝を、薬として試す小川笙船(片桐はいり)だったが、戦いは失敗に終わる。「この国を滅ぼさぬために」と、小川からの骸(むくろ)の検分と、水野からの蘭学解禁の願い出を許す吉宗。このとき、蘭学に触れることを許されたのは男子のみ。流行り病により日本では男子が少ないと外国にバレぬためだったが、赤面疱瘡の撲滅は、国を滅ぼさぬ道であるとともに、女性から男性へと権力を移行させることと裏腹にも思える。いずれにせよ、これにより医学は発展していく。
7年後、家重(三浦透子)、次女の宗武(松風理咲)、三女・小夜姫(竹野谷咲)と、娘を3人もうけた吉宗には、後継ぎ問題がささやかれるようになっていた。次期将軍には、老中・松平乗邑(黒沢あすか)を筆頭に、見た目もよく聡明で、周囲への気遣いも申し分ない宗武を推す声が上がる。ここで、家重の話に移る前に、圧巻だった貫地谷による久通の一連のシーンに、やはり触れないわけにはいかない。
宗武を推す乗邑に、「宗武様が(将軍に)なりたがっておいでだからですか、宗武様がそうおっしゃられたのですか、貴殿にそう頼まれたのですか」と吉宗もびっくりの早口でまくしたて、「本来、嫡子でないものを家臣が担ぎ出し、跡目を云々することを、俗に、謀反と申しますが、この一連、左様なものと捉えてよろしいか」と静かなる迫力で抑えた姿は、その場を完全に支配しており、スゴイとしか言いようがなかった。
さらに久通は、「上様こそ上に立つべき人」と確信した幼き日の思い出を語る。“将軍の器”とは、他の者を思う心のあるなしであると。ちなみに吉宗も嫡子ではない。姉たちが亡くなったことで将軍職が回ってきたのだが、これについては最終話で触れられるはずだ。



