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「年中無休」で働く99歳女性、不便でも幸せな毎日が続く“シンプルな理由”

 都会から田舎へ移住し、第二の人生を紡ぐ。昨今、若い方の移住組も目立ちますが、『過疎の山里にいる普通なのに普通じゃない すごい90代』(すばる舎)の著者、池谷啓さんは1953年生まれ。都会暮らし40年に限界を感じて、田舎暮らしを実践しはじめます。

都会から田舎へ、人生の仕切りなおし

 静岡県浜松市天竜区に位置する春野町は、人口が3500人ほどで東京23区の4割もの広さです。清流があり、森があり、空気は澄んでいて星空がきれいな土地。都会にない自然がある代わりに、都会では普通の便利さがありません。交通、医療施設、商業施設などの規模は別次元で、さらに過疎高齢化が著しく、ここ10年で人口減少率は3割近いといいます。  そうなると80代、90代でも自立して生活しなくてはならないのですが、都会人の心配をよそに、春野町の高齢者はとにかくすごいのです。私達から見る「すごい」を当然のごとくやってしまう90代の方々を、ここで紹介していきますね。

集落で唯一の商店を開く99歳の女店主

尾上せき子さん(99歳)

尾上せき子さん(99歳)
(写真:内山文寿(内山写真デザイン事務所)、池谷啓)

「休みなんてものは年中ないんだよ。わはは」。小さな商店をきりもりする尾上せき子さんは99歳。食品、お惣菜、日常品、生活雑貨などを扱う商店で、仕入れから接客、販売すべてをこなします。経営歴は70年、今も現役なのですから、すごい90代に違いありません。  自分の食事は自分で用意、週に一度は自分で洗濯をします。暗算が得意でお釣りを間違うこともなく、お客さんにオススメの商品をおしえていたりもします。畑を耕して、収穫した野菜を食べて、1日の終わりには10時間眠るそうです
集落で唯一のせき子さんのお店

集落で唯一のせき子さんのお店
(写真:内山文寿(内山写真デザイン事務所)、池谷啓)

 田舎には便利さがないのではなく、自分でできることがたくさんあるのです。私達と比較にならないほど体を動かし、働いて、いい空気を吸い、太陽の光をあびれば、ストレスが突き入る隙もないのでしょう。 「今年で100歳になるんだ。100を超えても店は続けるよ」と尾上さん。生涯現役宣言をする、輝かしい笑顔です。
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森の中の一軒家でひとり暮らしをする92歳
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