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「こういうおじさんいる!」と思えた。朝ドラ『あんぱん』27歳俳優の“初老の演技”に注目

『アンパンマン』の作者であるやなせたかしをモデルとする、朝ドラ『あんぱん』(NHK総合)の柳井嵩(北村匠海)が、滋味深い初老感を醸している。
朝ドラ『あんぱん』©︎NHK

朝ドラ『あんぱん』©︎NHK

 第24週第118回で、主人公である妻・柳井のぶ(今田美桜)が『アンパンマン』の読み聞かせをしているところをのぞく場面は、あぁこういう動作のおじさんいる! と、思わず膝を打った。  北村匠海が表現する初老感が、とてもリアルなのだ。男性俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が解説する。

フラットな状態で名演が湧きでる

 今田美桜主演の朝ドラ『あんぱん』に出演する北村匠海は、どの場面でもいちいち非の打ち所がない演技をする。もちろんこれ見よがしなところは全然ない。常時フラットな状態で画面上に名演が湧きでる、この感じ。  これはいったい、どういう演技の仕組みになっているのか。是非とも北村匠海本人に、柳井嵩役の演技プランを開示してもらいたいところでもあるのだが、実際の画面上から北村匠海の演技を分析してみる他ない。  本作を戦前、戦中を描く前半部と、戦後を描く後半部に大きくわけてみる。するとこの前半部と後半部で、(どちらもフラットながら)彼の演技にはっきりコントラストをつけている動作と仕草がそれぞれあることがわかる。

北村匠海の演技プランとは?

朝ドラ『あんぱん』©︎NHK まだ漫画家になりたいという夢を抱いていたに過ぎなかった前半では、主に主人公・柳井のぶ(今田美桜)に対するリアクションとしての動作が印象的だった。たとえば、第13週第65回で、高知新報への入社が決まったのぶが全力疾走する場面。  嵩は自分の前を通り過ぎて走っていくのぶを見て「俺はのぶちゃんが元気ならそれでいいんだ」と言った。そのとき、立ち上がった状態の嵩は、少し身体をのけ反らせていた。当時の嵩が繰り返していたこの動きは、彼の呑気な頼りなさを象徴する微動だった。  一方、のぶと夫婦になった後半では、腕組みをするようになる。のぶのことも外では「カミさん」と呼ぶようになり、腕組みの仕草が、少なからず嵩の威厳みたいなものを醸した。というように、おそらく本作の北村は前半と後半で動作を使い分けて、明確な演技プランを組んでいたのではないかと思う。
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前半部と対照的な挙動
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【放送情報】
『あんぱん』特別編
9月29日(月)~10月2日(木)(全4回)
[NHK総合]夜11時~11時25分
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