元子役・36歳の私が「左利き」でずっと諦めてきたこと→再挑戦してみたら…「泣きそうでした」
橋田壽賀子脚本の人気長寿ドラマシリーズ『渡る世間は鬼ばかり』(TBS系)で10歳から12年間、“加津ちゃん”こと野々下加津役を演じていた宇野なおみさん(36歳)。かつて“天才子役”と呼ばれた宇野さんは現在、フリーライター、エッセイストとして活動中です。
そんな宇野さんが30代女性として等身大の思い、ちょっとズッコケな日常をお届けるエッセイ連載。今回は「編み物」をテーマに綴ります。
【過去記事】⇒連載「話そ、お茶しよっ元気出そ」エッセイ一覧
編み棒によって、丸い毛糸玉が作品になっていく。
彼のためにセーターを編む主人公。少女漫画でたまにあったシーン。
ずっと憧れていましたが、編むことは長いことできませんでした。なぜかというと、わたくしの根本が左利きだからです。
皆様、ご機嫌よう。今回は、「左利きでの編み物」についてお話します。ただ、皆さん私の利き手に関して、「えっ?」と思われるかもしれませんね。
実は、渡鬼出演のときは、右利きとしてお芝居していたのです。子役のとき、時代劇出演の折に「当時は右利きしかいなかった」と言われて以来矯正し、今はほぼ両利きでして。これ、初めてお話するかもしれません。
すごーいと言われますが、不器用なのであんまりよかったことはないんです。図工や美術の授業で使うはさみはへたくそだし、家庭科の包丁はのこぎりみたいな切り口になるし。
極めつけは体育です。左投げのノーコンのため、球技でびっくりするくらい足を引っ張っていました。思い出したらつらくなってきたぞ。
そして編み物は、編む手が逆になるために、やり方がずっとわからないままでした。
母は編み物が得意で、小さいころから興味津々だった私。ところが、右利きと左利きでは編む方向も違えば、編み目も異なります。そのため、教えてもらってもお互い途方に暮れるしかなく……。
とはいえ昔からめげないので、独学でアクリルたわし作りに挑戦したこともあります。不器用が発動し、長方形のアクリルたわしがなぜか何度やっても茄子形になる。どうしてカナ? 編み目の数え方を知らなかったんですね。
地方公演の千穐楽のお祝いを作りたいとつたないながら考えトライしたもので、不格好なそれを配り歩きました。今思うと恥ずかしいことしきりですが、16歳なりの精一杯。
そしてそのなすびアクリルたわしは、20年経ってなお、三田佳子さんのお家にまだ保管されている……と以前お目にかかったときに伺いました。
三田佳子さんのお宅に自分が高校生のとき作ったどへたくそなアクリルたわしがあるって、いったい何? 異世界転生みたいな文字面すぎない? 例えリップサービスだったとしても、覚えていてくださったことがありがたすぎませんか。
閑話休題。
そんな“編み物片思い”の私に差した一条の光が、「左利き向けのかぎ編み教本」でした。
お手本の写真が、左手に編み棒を持っている!!! 脳内ですべて反転しなくては読めなかった本がすらすら読めます。なるほど、玉編みってそういうことだったのか!!
初めてまともに編めたのは、ぬいぐるみ用の小さな小さな三角帽子。泣きそうでした。
不器用な左利きの悲しみの日々
へたくそアクリルたわしは三田佳子さんのもとへ
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