Fashion

“イタいおばさん”呼ばわりが止まらない…「好きな服を着ているだけで叩かれる現象」はなぜ繰り返されるのか

 みなさんこんにちは、ファッションスタイリスト&ライターの角佑宇子(すみゆうこ)です。  昨今、よく目にする「消齢化社会」という言葉。年齢によって生まれる価値観の違いが薄れてきており、世代で物事を区分けしない社会現象を指している新語です。この概念はファッション界においても非常に肯定的な意見が多く、「年齢にかかわらず好きな服を着れば良い」といったエイジレスファッションを謳う世論が年々強まってきています。  なんとも前向きで素晴らしいスローガンですが、さて、私たちは本当に“年齢”に関係なく、好きな服を着ても良いものなのでしょうか。今回は、高まるエイジレスファッションの是非について考察していきたいと思います。

エイジレスファッションってなに?

エイジレスファッション エイジレスファッションとは、「年齢制限のない服装」という概念で幅広く定義される、新しいファッション用語です。最近、雑誌やSNSでもよく見かけますが、エイジレスファッション自体が広義的なものなので、使い方や捉え方に若干の曖昧さが残るのも特徴的なポイント。  基本的には「年齢・年代を問わずおしゃれを楽しみましょう」という前向きなマインドを提唱する際に使われています。その一方で、年齢を重ねても着続けられる定番・シンプル・着心地の良い服に対して「エイジレスファッション」と呼ぶこともありますね(それは、どちらかというと“タイムレス”が合っていそうですが……)。  エイジレスファッションが生まれた背景には、2000年代後半から超高齢化社会に突入したことが大きいのではないかと推察しています。この頃から、ジェンダーレスファッションも目立ち、年齢や性別といった区分けで物事を判断しないという多様性が人々の生活にも馴染み始めています。ジェンダーレス(男女兼用ファッション)はすぐに浸透しましたが、エイジレスファッションに関しては、年齢を気にしがちな国民性もあってかなかなか広まりづらかったのかもしれません。ここ数年でようやくエイジレスファッションを受け入れられる人が増えてきたのでしょう。 【関連記事】⇒Xで炎上「カジュアルおばさん」はイタい? 大人女性が“服装で守ってほしいこと”をスタイリストが解説

ネット上で絶賛されている理由

 最近の女性のファッショントレンドは、肌の露出が多いものが増えています。その影響もあってか、今は30代以上の大人世代でも気軽にミニスカートやヘソチラコーデを楽しむ姿をよく見かけますよね。そうしたオシャレを楽しむ人に対してネット界隈では「おばさんの露出はイタい」といった否定的なコメントと、逆に「年齢関係なく好きな服を着ていて素敵!」という肯定的なコメントとに二極化しているようです。  これは女性の露出度合いに限った話ではありません。いつまでも若々しくいたい気持ちが透けて見える「パーカーおじさん」や、服装が若い頃からアップデートされていない「カジュアルおばさん」といった、年齢によって着る服装を正すべきという意見が度々SNSで炎上しています。こうした年齢×ファッションの是非問題は、以前から論争されてきていますが、ここ数年でより目立っているような気がします。この繰り返される論争に対しネットユーザーも同じように感じており、疲弊してきているのではないでしょうか。  正直なところ、「他人の着ている服なんていちいち気にしたことはない」という意見が多数派であり、かつ最終的に「迷惑がかからないなら好きな服を着ればいいじゃない」と、落ち着くことで誰も傷つけない、傷つかないですむ結論にまとめられる。こういう流れが現代の消齢化社会の概念と共鳴し、ひいてはエイジレスファッションがさらに市民権を得てきているのではないでしょうか。 【関連記事】⇒「パーカーおじさんはおかしい」論争で見えてきた、パーカーで“残念に見える人”と“普通に見える人”の大きな違い
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履き違えてはいけない、エイジレスファッションの意味
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