「キウイを朝食べてはダメ?」誤情報はなぜ広まってしまったのか…トップ研究者が“地道な戦い”を続ける理由
物価上昇が続く昨今、比較的手頃な価格で買えるキウイフルーツ(以下、キウイ)。抜群の栄養価もうれしいそんなキウイですが、実は科学的根拠がまったくない誤情報が根強く信じられ続けてきました。そんな誤解を解くべく地道な活動を続けるキウイ研究の第一人者である駒沢女子大学健康栄養学科名誉教授の西山一朗さんにお話を聞きました。
――インターネット上には健康に関する情報が溢れていますが、キウイについても誤った情報が出回っていると伺いました。具体的にどのような内容なのでしょうか?
西山一朗さん(以下、西山):私が長年、研究の対象としているキウイが、根も葉もない悪評が流布され続けている現状があります。
ネット上には、「キウイにはソラレンという光毒性を持つ物質が多く含まれている」「キウイを食べてから日光を浴びると日焼けやシミがひどくなるから、朝食べてはダメ」などという内容が書かれたサイトが今もたくさん存在します。
――「朝キウイを食べると日焼けやシミがひどくなる」というのは根拠のない情報ということですか?
西山:キウイの果実にソラレンが含まれるという科学的根拠は、これまでに一件も示されていません。私自身でも機器分析を行いましたが、キウイ果実からソラレンはまったく検出されませんでした。そもそもキウイを食べると日焼けやシミがひどくなるなどという科学的根拠もまったくありません。なので、これらの情報に惑わされることなく、安心して朝からキウイを食べてもらいたいです。
また、キウイだけでなく、かんきつ系の果物もソラレンを含むので、朝食べてはいけないかのように書かれていることもあります。グレープフルーツやオレンジなどには、確かにソラレンが含まれるとはいうものの、それを食べたからといって日焼けが増すなどということを示した科学的根拠もありません。
――科学的根拠がないにもかかわらず、なぜこれほどまでに情報が拡散してしまったのでしょうか。
西山:実はこの誤情報の根源は、あるテレビ局が2015年に放送したバラエティ番組の内容でした。番組の放送終了後、この番組の公式ホームページにも同様の内容が掲載され、そこからどんどん広がっていったようです。
こうした身近な健康情報は多くのサイトがコンテンツとして掲載したがりますし、個人が自分のサイトやSNSなどに載せることもあるでしょう。そうしたサイトにとっては収益につながる「ネタ」となるわけです。「美肌効果が期待できると信じて食べていたビタミンCたっぷりのキウイが、実は美肌を遠ざけていた」などという「ストーリー」は、いかにも多くの人の関心を集めそうですよね。
さらに多くのサイトは積極的に記事を拡散させるため、誤った情報がさらに拡散されてしまいます。当初はそのテレビ番組だけが発信していたはずが、次第にその「情報」を信じた人がまた別のウェブ上に書き込んだりして、収拾がつかない状態まで広がってしまうわけです。
――ソラレンに関する誤情報のほかにも、キウイに関する誤解はあるのでしょうか。
西山:はい。特にタンパク質分解酵素である「アクチニジン」については、いくつかの誤解があるようです。
たとえば、「キウイにはタンパク質分解酵素であるアクチニジンが豊富に含まれている」という情報です。もしもキウイというのが、一般的に市販されているグリーンキウイだけを指すならば、正しい記述です。グリーンキウイには、1個あたりアクチニジンが250mg程度含まれており、これは酵素の含量としては相当多い部類に属します。
ただし、レインボーレッドや一部のゴールドキウイなどは、アクチニジンをほとんど含んでいません。そのため、キウイ全般に対して「タンパク質分解酵素であるアクチニジンを豊富に含みます。」と書くのは、厳密には間違いということになります。
また、「アクチニジンはキウイの皮の近くに多く存在する」というのも正しくありません。アクチニジンは果肉の緑色の部分に、ほぼ均一に分布しています。中央の白い部分には少ないのですが、皮の直下に特に多いという事実はありません。
「キウイを食べると日焼けやシミがひどくなる」は無根拠
誤情報の根源は2015年に放送されたバラエティ番組
広がっている誤情報はほかにもある
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