『ばけばけ』がこだわる「普段の朝ドラではしないこと」とは? “目に見えていない部分”が見たくなる仕掛け
松江の没落士族の娘・小泉セツさんとその夫で作家の小泉八雲さん(パトリック・ラフカディオ・ハーン)をモデルにした、連続テレビ小説『ばけばけ』(NHK総合・毎週月~土あさ8時~ほか)。武士の時代が終わりを告げた明治時代の島根県松江市が舞台となっている本作。私たちに当時の松江市の空気感はわからない。それでも、どこか懐かしさを覚え、“当時の松江市”としての説得力を感じる。
その一方で、主人公・松野トキ(髙石あかり)をはじめ、登場人物は出雲弁を口にしてはいるものの、どことなく現代的な喋り方も特徴的だ。日本の歴史を感じられる一方で、“今風”も垣間見える本作ではあるが、どのように制作されているのか。本作の制作統括を務める橋爪國臣氏に話を聞いた。
“当時の松江市”を描くうえで意識したことを聞くと、「当時の松江には近代化していない部分も多く、美しい町並みが残っていました。そこにやってきたレフカダ・ヘブン(トミー・バストウ)の目線と、近代化していない松江の情緒に目が向いているトキの目線。“リアルで生々しい松江”というよりは、この2人の目線を通した美しい松江を描けたらと思っています」と答える。
具体的にこだわった部分として「今回、光やレンズ、カメラの選定などにはこだわっていて、普段の朝ドラではしないことをしています」という。
「朝ドラは全体を明るくして、隅々までハッキリと見せ、役者も綺麗に映るようなライティングが基本です。ただ、本作では“影”をとても大切にしています。『ばけばけ』は、影の部分にいろいろな感情が潜んでいるため、登場人物のすれ違いが起きていく。
また、目に見えていない部分が大切なものだったりすることも本作の特徴です。“見えていない何か”が本作の核で、それが恨めしかったり、素晴らしかったりすると考えています」
続けて、影の作り方として「ただただ真っ暗にすればいいわけではない。明るさとのコントラストがあってこそです。また、真っ暗ではなく、クリーミーな黒色になるように、演出、照明、カラリストと目指していきました」と説明。光ではなく影を意識しているからこそ、コントラストに美しさや怖さを感じられるのだろう。
照明を扱ううえで意識したことについて、「リアリティにもこだわっていて、当時の空気感を出すため、『ドラマであれば顔を明るく映さなければいけない』という考えは捨てるように制作スタッフ間で共有しました。『なんでここに光があるの?』とは思われないように、ロウソクや夕日といった“リアルな光源”を意識して、登場人物や風景を照らすようにしています」と話す。
また、「スモークもけっこう炊いていて、朝ドラでこれだけ焚くことはないんですよね」と照明以外の機材の活かし方も口にする。
「朝方の靄がかかった雰囲気など、松江のシーンは幻想的に撮っています。それはハーンさん、劇中ではヘブンですが、『実際に来日した時には日本に対する幻想を抱いていたのでは』と思うので、その辺りのハーンさんの心情を描きたかったんです」
影を大切にした朝ドラ
「朝ドラは全体を明るくして、隅々までハッキリと見せ、役者も綺麗に映るようなライティングが基本です。ただ、本作では“影”をとても大切にしています。『ばけばけ』は、影の部分にいろいろな感情が潜んでいるため、登場人物のすれ違いが起きていく。
また、目に見えていない部分が大切なものだったりすることも本作の特徴です。“見えていない何か”が本作の核で、それが恨めしかったり、素晴らしかったりすると考えています」
続けて、影の作り方として「ただただ真っ暗にすればいいわけではない。明るさとのコントラストがあってこそです。また、真っ暗ではなく、クリーミーな黒色になるように、演出、照明、カラリストと目指していきました」と説明。光ではなく影を意識しているからこそ、コントラストに美しさや怖さを感じられるのだろう。
幻想的な雰囲気はヘブンの視点から生まれた
また、「スモークもけっこう炊いていて、朝ドラでこれだけ焚くことはないんですよね」と照明以外の機材の活かし方も口にする。
「朝方の靄がかかった雰囲気など、松江のシーンは幻想的に撮っています。それはハーンさん、劇中ではヘブンですが、『実際に来日した時には日本に対する幻想を抱いていたのでは』と思うので、その辺りのハーンさんの心情を描きたかったんです」
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