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「金払って素人の歌を聴きたくない」なぜKing Gnuの“合唱肯定”は批判されるのか? B’z公演でも物議の現代の“潔癖すぎるライブマナー”とは

 ライブ中、隣の人の歌声がうるさくて集中できない――。そんな永遠のテーマともいえる「ライブマナー」を巡り、またしてもSNS上で激しい議論が巻き起こっています。

「何でお金払って素人の歌を…」広がる困惑

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King Gnuの井口理さん
画像:株式会社朝日新聞出版 プレスリリースより

 議論のきっかけとなったのは、人気ロックバンド・King Gnuの井口理さんが、2月22日の公演中に行った発言です。事の発端は、演奏中に「隣の客が歌っていたせいでKing Gnuの歌が聞こえなかった」という不満の声がSNS上で上がっていたこと。井口さんはこれに触れる形で、自身の思いを次のように明かしました。 「ガンガン歌ってもらって。なんか隣の声うるさいなと思ったら、それ以上に歌ってください!」  ライブ中、ファンがアーティストと共に歌う「大合唱」について、井口さんは明確に肯定する態度を表明したのです。  この発言に対し、SNSでは「本人がいいと言っているなら最高」「ライブの一体感こそ醍醐味」と歓迎する声がある一方で、「アーティストの歌声を聴きに行っている」「周囲への配慮は必要では」といった困惑の声も上がっており、ライブマナーのあり方を巡る議論が再燃しています。  しかし、この井口さんの発言には、ファンの間でも真っ向から賛否が分かれています。  否定派からは、「何でお金を払ってまで、隣にいる素人の歌を聞かなきゃいけないのか」「下手なやつに限って大声で歌う。お前の歌声を聞きに来ているわけではない」といった、切実な不満が噴出。井口さんの発言に異を唱える声に、多くの共感が集まっています。  一方で、井口さんの姿勢に理解を示す意見も少なくありません。「ライブでは一体感を楽しみたい気持ちもある。井口さんのように、アーティスト側がはっきりと考えを表明してくれるのはいいことだ」と、公式に「合唱OK」と言ってくれたことに救われるファンもいるようです。

B’zの公演でも話題に…繰り返される議論

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画像:レッドブル・ジャパン株式会社 プレスリリースより

 ライブやコンサートについては、たびたび同じ議論が繰り返されます。最近だと、B’zの東京ドーム公演で歌う観客に対するSNSでの苦言が話題になったのも記憶に新しいところです。 【関連記事】⇒「あんたの歌を聴きに来てない」B’zライブでの“客の大熱唱”に批判殺到。なぜ日本人はコンサートで他人が歌うと不快なのか  今回も井口さんの発言に共感するよりも、「隣の客が歌いだしたらどうしよう」という懸念の声が多数であることが印象的です。ここからうかがえるのは、日本人にとってライブとは、多数の人たちと楽しむよりも、「個人の趣味や嗜好の範囲で味わうもの」だという位置づけです。  確かに、昨今チケット代は高騰しています。お金のやりくりをして抽選の高い倍率も通って、ようやっと参加することのできるライブ。アーティストの歌や演奏に集中できないのは悲しいことです。その意味で、井口さんの呼びかけに疑問を抱くのは理解できます。  つまり、チケットを入手するために費やした労力に対して、元を取れなければ納得できるわけがない。これが、“あんたの歌を聞きに来たわけじゃない”という不満の根っこにある感情なのでしょう。そうした不満の正しさを裏付ける根拠として、「ライブであっても音楽をじっくり聴きたい」という鑑賞の姿勢が真っ当なマナーであると強調されるわけです。
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“音楽とは何か”を問い直すきっかけに
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