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『アーティスト』のアカデミー賞受賞監督が来日!“コメディ監督”はなぜ戦争を撮ったのか

 2011年、黄金期のハリウッドを舞台にモノクロ&サイレントのスタイルでロマンス・コメディを描いた『アーティスト』が世界を席巻(日本公開は2012年)。第84回アカデミー賞では10部門でノミネートを果たし、作品賞、監督賞を含む5部門を受賞しました。その『アーティスト』のミシェル・アザナヴィシウス監督が、新作『あの日の声を探して』を携えて来日。作品についてお話を伺ってきました。
ミシェル・アザナヴィシウス監督

ミシェル・アザナヴィシウス監督

『アーティスト』はもとより、これまでに発表してきた作品からもコメディを撮る監督というイメージが強かったアザナヴィシウス監督。しかし、『あの日の声を探して』は、1999年のチェチェン紛争時を舞台にしたヒューマンドラマです。ロシア軍兵士によって、両親を目の前で殺され声を失った少年ハジと、紛争を世界へ伝えようとするEU職員キャロル、さらに若きロシア兵コーリャの姿が並行して描かれていきます。 ⇒【YouTube】あの日の声を探して 本予告 http://youtu.be/hjsrho1cjPo

この戦争は語るべきだと思ったのです

「コメディは大好きだし、素晴らしいジャンル。もちろん今後も取り組んでいきますよ」と話す監督。そんな彼が、なぜあえてチェチェン紛争を見つめたのでしょうか。 「チェチェン紛争は非常に暴力性の高い、20万人、30万人の死者を出した“戦争”です。そんな戦争が、国際社会の無関心の中で行われていた。出来事自体が抹殺されてしまったような戦争なのです。敗戦国のチェチェンは自分たちの口で当時のことを語っていませんし、ましてや映画で語られることなどありませんでした。私はこの戦争は語るべきだと思ったのです」。さらにこうした理由も。 「この戦争が抹消されたことによって、ロシア軍の関与する内戦や紛争が拡大していったのです。つまりチェチェン紛争は、そのとき限りの紛争ではなく、その後も発生していった争いの母体となった戦争である、その重要性も考えての選択でした」。ただし本作では直接的な戦争の描写はほとんどありません。戦争より、人々がどう犠牲になったのか、ひいては人間そのものの姿を映し出していくのです。  監督も次のように語ります。「戦争そのものを描写することにはまったく興味がなかったんです。私が撮りたかったのは、兵士が殺戮をしていくシーンではありませんから」。 ⇒【画像】はコチラ http://joshi-spa.jp/?attachment_id=247238
『あの日の声を探して』より

『あの日の声を探して』より

 おそらく鑑賞前の本作のイメージは、両親を亡くした幼い少年ハジの物語でしょう。もちろん、それも間違ってはいません。しかし、非常に心に残るのが、同時に描かれる若きロシア兵コーリャのエピソード。コーリャのパートを置いたことで、物語にリアリティと説得力が生まれ、観客の目は、一層、スクリーンから離れられなくなるのです。
『あの日の声を探して』より 2

『あの日の声を探して』より

 そして胸に刻まれるラスト。本作のラストからは、希望と絶望が同時に感じられます。実は「脚本の段階でも、編集の時点でも、もともとは“希望”で終わっていた」と明かした監督。しかしこの変更によって、きっと、本作はあなたにとって忘れられない1本になるはずです。 <TEXT,PHOTO/望月ふみ> 『あの日の声を探して』はTOHOシネマズ シャンテほかにて全国順次公開 配給:ギャガ (C) La Petite Reine / La Classe Americaine / Roger Arpajou オフィシャルサイト http://ano-koe.gaga.ne.jp/
望月ふみ
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビューを中心に活動中。@mochi_fumi
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