安藤華代さん(仮名・26歳/会社員)も、会社からリモートワークを命じられたうちのひとり。一人暮らしでUber Eatsのデリバリーに飽きた頃、自炊に目覚めたそうです。
「散歩を兼ねて食材を買いにスーパーへ行くようになったんですけど、混雑する時間帯を避けたかったから、閉店1~2時間前に行くと決めていたんです。お刺身やお惣菜が割り引きになることが多かったから、得した気分で買い物を楽しんでいました」
スマホにメモした材料をチェックしながら店内を歩いていた華代さん。食品陳列棚で、あるモノを発見します。
「
3個1パックの納豆が、棚に1パックだけ残っていたんです。『コロナに効く』というウソの情報でいつも買えずにいましたが、私の大好物。急いで売り場に駆け寄りました」
華代さんが1パックの納豆を手にした瞬間のことでした。
「
背後から視線を感じて振り返ると、前向きの抱っこ紐で赤ちゃんを抱いた女性が、納豆を恨めしそうにニラんでいたんです。彼女は、コロナ対策には納豆が有効だと信じているんでしょうね。
その目は『
私には赤ちゃんがいるのよ! その納豆を譲りなさいよ!』と言わんばかりでした。
泣く泣く『どうぞ』と渡したら、当たり前よね、という表情で『ありがとう』(赤の他人に敬語ナシ!)と言い、去っていきました」
以来、華代さんは送料がかかってもネットスーパーで納豆を含め食材を購入しているそうです。とはいえ、スーパーへの買い物も自由に行きづらい毎日です。みんな抱える事情も違うでしょうし、譲り合いの精神は忘れないようにしたいですね。
<文/加藤環>