「母が、子どもにかんして一切いわなくなったんです」と奈津子さん。どのうような心境の変化があったのでしょうか。 「都内に住んでいる私たちの身を案じてくれて、『今は（コロナにかからず）生き延びることだけを考えて行動しなさい』と、心配してくれています。小さな子どもがいる働く女性がリモートワークに苦労する実情をニュースで見たらしく、『奈津子の仕事は、子どもが家にいたらできないのよね？』とも聞かれました。 『難しいかもしれないね』と答えたら、『非常時だから、夫婦水入らずでよかったのかもしれないね』という声は、強がっているわけでも悲しんでいるわけでもなく、素直な感想だったと思います。母の子どもだからこそ嗅ぎ取れたんです。 　仕事でどこに外出したのか、電話がくるたびにチェックされるのは正直うるさいなと思いますけど（笑）、親が子どもに注ぐ愛情の深さを改めて感じて、感謝しています」 　淳さんのご両親は、彼は結婚するつもりがないと思っていたらしく、結婚したという事実を喜んでくれているそう。奈津子さんのお父様同様、子どもについては結婚してから今も、とくになにも言わないそうです。 　夫婦の絆も強固になったと、奈津子さんは続けます。 「フリーランスの私がコロナで収入が不安定になり、淳さんと経済面で話し合ったんです。『蓄えがあるからしばらくはしのげるけど、このまま低収入が続いたら、今までのように生活費を折半にはできないかもしれない』と。淳さんは、『そのときは俺が協力する。逆も同じで、2人で助け合って生きていこう』と言ってくれました。最強の味方を手に入れた気がして、感動しました」 　逆境を悲観せず、ポジティブに捉えて乗り越えるご夫婦。素敵です。 ＜文／加藤環＞