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看護師へ罵声…“コロナ差別”が深刻に。医療現場に生の声を聞いた

訪問看護の現場でも「感染源にならないか心配されている」

 報道の多くは病院にスポットが当てられますが、在宅で医療を要する患者宅へ訪問して診察する「訪問看護」の現場でも、冒頭で紹介した例をはじめ、コロナによる差別や偏見があります。  訪問看護の看護師である増岡さん(仮名)は、「私たちが感染源にならないか心配されている利用者は多い」と現状を語ります。利用者は要介護や要支援で医療ニーズのある方々だけに、コロナに対してより大きな不安を抱えている様子で、日に何軒訪問するのか聞かれることもあれば、しばらく訪問を見合わせてほしいとの申し出もあったといいます。 訪問看護「私たちのサービスは高齢で重い病気を抱えた方が対象なので、そのような反応も当然のことと受け止めています。そのため差別と感じることはありませんが、やはりお伺いしたときに、ピリッとした空気は感じますね」と増岡さん。  自分たちが感染源になりうるとの意識の下、訪問時は長袖ガウン、マスク、ゴーグル、シャワーキャップの着用を徹底し、事務所に戻り次第すべて洗濯するようになったといいます。検温も毎日行い、体調に少しでも違和感があるスタッフは訪問を見合わせるなどの対応もしているとのこと。また、営業車の消毒、訪問以外の作業のテレワーク化、事務所の換気などの取組みも行っているそうです。 「もし私たちの誰か1人でもコロナに感染すれば、2週間の営業停止となります。その場合、近隣のステーションがフォローすることになっていますが、どこもいっぱいいっぱいで、引き受けられる状況ではないのが実際のところです。対応できるところがなければ、いちばんの被害者はご利用者の方々。そのため、『絶対に感染してはいけない』との思いから、スタッフ全員で、できる限りの対策を講じて取り組んでいます」 患者 一方、利用者側に怪しい症状が見受けられるときは、蔓延(まんえん)回避のために訪問を見合わせ、本人と家族に具体的な対応と期間を示した上で、医師やケアマネージャーと協力して電話によるフォロー体制をとっているそうです。 「独居の方は、孤独を感じさせないような配慮も必要です。在宅だけに、テレビからの膨大な情報をすべて鵜呑みにして大きな不安を抱えている方も少なくありません。最新情報が次々アップデートされ、さまざまな情報が錯綜(さくそう)する中だけに、私たちが振り回されることのないよう、信ぴょう性の高い情報をさらに吟味してジャッジするように注意も払っています」  コロナ患者との直接的な接点はなくても、徹底した感染対策を行っているという訪問看護の看護師たち。感染できないプレッシャーと感染の恐怖のはざまにありながらも、個々の利用者の不安に向き合うさまざまな配慮の中には、いち看護師としての思いから行われていることも多く、それらには保険による報酬もないのが現状です。
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医療従事者への差別は医療崩壊につながる
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