「なんか変だなと思いました。食事が始まっても、なかなか核心に触れずにいるので、私から振ってみたんです」
こないだの話って? すると後輩は堅い表情で、「『それなんですけど、やっぱりイズミさんと付き合うのは無理です』って」
ぼう然とするイズミさんに、後輩は「無理」な理由を次々に述べたのです。
「『○○さん(後輩とも共通の知り合いである元彼)にイズミさんについて改めてきいてみたら、イズミさんが最近彼氏できないのには理由があるんだなって思いました』とか、『前回会って以降のイズミさんからのLINEが急に馴れ馴れしく感じてしまって、付き合うとなると無理だと思いました』とか……」

冷静に熟考を重ねた上での結論を淡々と話しだした後輩。
「でも、別にこっちは告白したわけでもないし。『冗談で言っただけじゃん』って言っても、『そういう不誠実なところも嫌だ』とか言われちゃって。取り付く島もない感じでした」
冗談を真に受けたのは後輩。私は本気で言ったわけじゃないのに、なぜ私が振られたような感じになってるの? イズミさんは内心ものすごく不愉快な気持ちでしたが、振られたみたいに惨(みじ)めになりたくない。そんな妙な意地から、帰り際にまた冗談っぽくふざけて後輩の腕に手を絡ませようとしたところ……。
SNSもブロックしたりされたり…それで最後になった
「猛烈な勢いで『やめてください』って振りほどかれて。もう最悪ですよね(笑)」

だから冗談じゃん、と言ってみても、後輩はうんざりした冷たい目。
「『もう先輩後輩でもいたくない!』って、そこそこ大きな声で言われて。私もカッとなっちゃって、『こっちは冗談で言っただけなのになに? そんなんだから彼女できないんじゃない?』ってまくし立てちゃったんです」
お互いにもう目を合わせるのも嫌といったような空気で別れると、つながっていた複数のSNSもそれぞれブロックしたりされたり……それが最後となったのです。
あんなに良い関係だったのに、とイズミさんは振り返りながら、
「手近なところで手を打とうとした私が悪いんです」
と、今でも少し後悔しているのだとか。
長年築き上げた関係も、壊れるのは一瞬のようです。
―人生最大の大ゲンカ―
<文/森田 奈々 イラスト/やましたともこ>