保護されたばかりのむーくん
公園に着いたのは、23時半ごろ。トイレ内を捜索すると、段ボール箱はなくなっていたものの、どこからか子猫の鳴き声が。スマートフォンのライトで照らしながら懸命に捜索をすると、トイレの掃除用入れの下にいるのを発見。20分間格闘した末、保護に成功しました。
「掃除用具入れには南京錠がかかっていたので、枝で誘導しました。出てくるとき、子猫は興奮していてトイレの外へ出てしまったので、必死に追いかけた。弱っていて動きが俊敏でなかったから何とか捕まえられましたが、正直危うかったです」
なんとか無事に保護できた、小さな命。そのぬくもりが尊く思えたからこそ、@uni_mugi_hachiさんは激しい憤りを感じました。
「むーは保護直後から懐いてきたので、おそらく直前まで人と暮らしていたのだと思います。でも、可愛がられていたかは疑問。少なくとも、数日間は食事をしていなかったようで、ご飯をあげるとガツガツ食べていました。脱水症状もすごかったです」
鳴き声を発しながら夢中でご飯を食べるむーくんはまるで、必死に「生きたい」と訴えているかのよう。
誰にも知られずにこっそり消えていたかもしれない命が紡がれた奇跡に、目頭が熱くなってしまいます。
おうちにやってきたむーくんに対し、先住猫のうにくん、むぎくん、はちちゃんがとった態度はさまざまでした。
「うにとむぎは平気でしたが、はちは警戒・威嚇していました」
@uni_mugi_hachiさんには保護猫の預かりボランティアをした経験があったため、初対面が大丈夫そうであれば、一緒に過ごす中で仲良くなってもらう形を取ることに。検査、ワクチン接種を済ませ、獣医さんの了承後に先住猫たちと対面させ、はちちゃんと交流を深めるときだけは万が一の事態が起こらないよう、近くで監督しました。
こうした気配りがあったからか、はちちゃんとむーくんの間にも絆が生まれ、現在4匹は仲睦まじい光景を見せてくれています。
「毎日が新発見の連続。水のみ皿に手を突っ込んで飲んだりするむーの姿や、むぎとむーのWへそ天を見て、微笑ましい気持ちになります」
そう語る@uni_mugi_hachiさんには近い将来、「保護猫カフェを開く」という夢があります。
「動物の命も人間と同じで、大切なもの。そこに差はないと思っています。保護猫の現状を知れば知るほど、自身で何とかしたいと思うようになってきたのでお店を開きたいんです」
1匹でも多くの猫を救いたい――。そんな@uni_mugi_hachiさんの夢が叶う日が来るよう、そして保護猫カフェというお店が存在しなくてもよくなるほど動物に優しい社会になることを心から願いたくなります。
人に見放され、一度はゴミのように捨てられたむーくん。小さな命はいま、死の恐怖に怯えなくてもいい場所で、わくわくする「明日」を待ちわびています。
<文/愛玩動物飼養管理士・古川諭香>
⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】古川諭香
愛玩動物飼養管理士・キャットケアスペシャリスト。3匹の愛猫と生活中の猫バカライター。共著『バズにゃん』、Twitter:
@yunc24291