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「妻が風呂に有毒ガスを…」殺しあう寸前までいった夫婦の悲劇

「あなたに離婚されたら死ぬ」

 その頃になると、亜子さんはすべてに対して無気力になり、家事を一切放棄するようになったが、筒本さんは咎めなかった。神経がけばだっている亜子さんにダメ出しじみた指摘などすれば、最悪の結果を招くだけだからだ。  そんな折、なんと亜子さんの浮気が発覚する。筒本さんの父親の葬式から半年も経っていない頃だ。 「僕の仕事が不規則だったので、ふたりの寝る時間と起きる時間はバラバラだったんですが、夜中に目が覚めると亜子が別の部屋でずっと電話してるし、僕が仕事から帰ってくると、そそくさと電話を切る。だから、彼女のスマホのパスワードロックを解除してメールを見てみました。携帯料金はすべて僕が払っていて、初期設定も全部僕がやったので、パスワードを知っていたんです」 写真はイメージです 完全に浮気だった。相手が亜子さんの“病気仲間”だということを、筒本さんは後日知る。 「僕がガチギレしてスマホを亜子につきつけたら、亜子は逆ギレして『もう死ぬしかない。あなたに離婚されたら死ぬしかない!』と錯乱しました。それからの数ヶ月は、文字通り地獄です。僕がいる時には、ずっと『死ぬ死ぬ』って口に出して言い続けてるんです」

包丁、119番通報、有毒ガス…

 口だけではなく、亜子さんは行動で示した。 「『手首切って死ぬ』と宣言して、突然家を飛び出すんです。追いかけると、駅前スーパーの包丁コーナーの前で黙って包丁を見つめてる。僕が追いかけてくることをわかってやっているのが見え見えなので、正直すごく腹立たしいんですが、それを言ってもしょうがない。なので、平静を装って『何してるの? とりあえず帰ろうよ』と声をかけ、手を引いて連れ戻しました」  ある時、筒本さんが仕事中に亜子さんから電話がかかってきた。取ると「火をつけて死ぬ」と言っている。慌てて帰宅すると、マンションの大家から「さっきまで消防車が来ていた」と聞かされた。火はつけず、119番通報だけしたようだった。  こんなこともあった。 「亜子の後に風呂に入ったら、目がしばしばするんですよ。開けてられないくらいに。亜子に聞いたら、『お風呂であなたと死のうと思って、“まぜるな危険”のやつを焚いといた』って。塩素系の洗浄剤と酸性の洗浄剤を混ぜて、塩素ガスを発生させてたんです。僕の命に別条はなかったですが……」  当時の亜子さんは、抗うつ剤など大量の薬を処方されていた。しかし、そう簡単に状況は変わらない。ほどなくして、筒本さんは心労で体調を崩す。勤務後に会社を出る時、足が動かなくなった。 「帰ったらまた亜子の相手をしなきゃいけないんだと思うと、本当に、物理的に足が動かなくなるんです。毎日が恐怖でした」  一度だけ、亜子さんの暴言に対して「人生で一番怒った」ことがあるという。 「亡くなった父親のことを侮辱されたので、かーっとなって……。気づいたら亜子の首を締めていました。最悪です。僕は一体何をやってるんだと思い、すぐに手を離しましたが、あれは、もう……本当に、ダメでした……」  筒本さんは離婚の決意を固める。しかし亜子さんは「離婚したら死ぬ」と言って譲らない。早まった行動を取られては大変なことになる。八方塞がりとなり憔悴を極めた筒本さんは、生まれてはじめて弁護士事務所の門を叩く。  そこで提案された戦略は意外なものだった。 ※続く#2は、8月1日に配信予定。 <文/稲田豊史 イラスト/大橋裕之 取材協力/バツイチ会>
稲田豊史
編集者/ライター。1974年生まれ。キネマ旬報社でDVD業界誌編集長、書籍編集者を経て2013年よりフリーランス。著書に『ぼくたちの離婚』(角川新書)、『ドラがたり のび太系男子と藤子・F・不二雄の時代』(PLANETS)、『セーラームーン世代の社会論』(すばる舎リンケージ)。「SPA!」「サイゾー」などで執筆。 【WEB】inadatoyoshi.com
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