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“夏の紅白” NHK『ライブ・エール』が示した、観客がいない紅白のメリット

「ウィズコロナの時代にNHKが送る夏の紅白」として、8月8日(土)に生放送された『ライブ・エール~今こそ音楽でエールを~』。
NHK『ライブ・エール』サイトより

NHK『ライブ・エール』サイトより

 司会の内村光良(56)によるピアノ演奏や、YOSHIKIがロサンゼルスから名曲「Forever Love」をオーケストラとコラボ。さらに、松任谷由美(66)が「やさしさに包まれたなら」を豪華出演陣と合唱したり、朝ドラ『エール』の主題歌「星影のエール」を、GReeeeNが顔を隠したシルエットで披露するなど、見どころが盛りだくさんでした。

「興味がない出演者にシラける観客」がいないメリット

 無観客のNHKホールからのライブ中継ということで、年末の紅白に向けたテスト放送なのかなと軽い気持ちで見ていたら、思いのほか楽しめました。演出面で盛り上がりに欠けるのではないかと心配された部分が、ことごとく良い方向に作用していたからです。  まず意外だったのは、観客がいないことによるメリット。たしかに歓声はなく、拍手もまばらなのはさびしかった。でも、“お客様”の力が反対に働く場合もあります。興味のないアーティストの出番で、反応に困って表情が固まる客席が映し出されるシーン、見覚えないですか? 無観客のおかげで、この“紅白あるある”を封じ込めたのは、本当によかったと思います。  例年、紅白が終わるとアーティストごとの視聴率が発表されます。もちろん、重要な指標なのでしょうが、それ以上に現場でのリアルタイムの反応は残酷です。音楽に合わせて身体を動かすことも、口ずさむこともせず、指示通りにペンライト的なおもちゃを振る観客ほど、虚しい存在はありません。
ペンライト

写真はイメージです

 近年、紅白に対して厳しい論調が多く見受けられる背景には、このように廃棄されてしまった時間がいたたまれなくなる人が増えてきているからなのではないか。  その点、『ライブ・エール』は、無感情のマシンと化した観客の姿を見ずに済んだおかげで、興をそがれませんでした。コロナ禍における、ケガの功名でしょうか。

芸人とかのムダな余興がないメリット

 同様に、音楽以外の出演者がほぼいないのもよかった。各分野から審査員を呼んだり、人気芸人が面白おかしく盛り上げたりするのも、年の瀬らしく楽しいのですが、ここ数年は、情報量が多すぎて画面上が密になっていました。  曲の余韻そっちのけで、芸人が流行りのネタを披露しては、盛大にスベる。近年の紅白で繰り返されてきたこの惨劇も、“密の回避”という鉄の掟があれば予防できる。そう確信できた、『ライブ・エール』のスマートな進行でした。
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三密を避けたバンドも
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