――被災地への寄付や現地へ訪問した様子もSNSで報告されていましたが、実際に足を運んでみていかがでしたか?
スザンヌ:ニュースから伝わる以上の光景で、言葉も出なかったのが本音でした。私が足を運んだときも街中にはガレキが積み上がり、車が横転していたりしていたんですが、現地の方が「これでも片付けたほうなんだよ」と言っていたのを覚えていますね。
どの方も「大変でしたね」とこちらから話すと「いや、うちはまだよかったほうですから」と答えてくださっていたのも印象的で。ただ、物資を届けた避難所の小学校で、周りの方に配慮してなかなか明るい雰囲気を出しづらい状況だというのも感じて、正直、どのような表情で声をかければよいかと迷いもありました。

「ニコニコ大作戦」と題し、被災地の小学校に届ける駄菓子を詰めているスザンヌさん
――日常でふと「東京に戻りたい」とよぎる瞬間はありますか?
スザンヌ:今はもうないですね。東京にも素敵な場所はたくさんあるけど、私としては住むならやっぱり熊本かなと思います。たぶん、自分のためと子どものための両方の気持ちがあるんですよ。やはり、生まれ育った場所で自然に囲まれた中で子育てがしたいという思いが強いし、地元へ帰ったことで飾らない自分でいられる気もします。
都内に住んでいた頃を振り返ると、息子との暮らしの中で「どうにかして稼いで頑張らなければいけない」と不思議と焦る自分もいた気がするし、今思えばだいぶ気負っていたなと思います。
――最後に、コロナ禍で子育てに励む女性たちに対するメッセージをお願いします。
スザンヌ:私自身は、自粛期間中にずっと「こんなにも子どもと一緒にいる時間があるのか」と感じていたんです。いずれ大人になっていく息子を思えば貴重な時間ではあるはずなんですけど、やっぱり、一つ屋根の下で長い時間一緒にいるとたがいにどうしてもイライラしてしまう瞬間もあると思うんですよね。
でも、将来振り返ったら必ず「幸せな時間だった」と考えられる日が来るはずで、私も息子と自宅でスノードームを作ってみたりしましたが、工夫をしながら“今”の時間を大切に過ごしてほしいなと思います。
<取材・文/カネコシュウヘイ>