しかし、その後、さらにみとらさんを苦しめる出来事が。それは元夫が考えている、虎之助くんの飼い方を耳にしたから。
「元夫は忙しくて虎之助をかまえていなくて。でも、最後まで面倒見ると約束したから実家のケージで飼おうと思っていると聞いて、いても立ってもいられなくなりました」
今まで伸び伸び暮らしていた子をケージの中で飼うなんて……。我慢できなくなったみとらさんは虎之助くんを引き取ることに。

虎之助くんは再びみとらさんのもとへ
「再会したとき、私のことなんてもう覚えていないだろうなって思ってたんです。でも、虎ちゃんって呼んだら大きな声で鳴きながら、まっすぐ私のもとに走ってきて甘えてくれた。その瞬間、思いました。この子を守るためにも、しっかりしなきゃって」
くっつき虫の虎之助くんは夏場はみとらさんの頭の近くで、その他の季節は腕枕をされながら眠るのが好きだったそう。

やんちゃで甘えん坊だった虎之助くん
「料理中もそばにいて、魚だと虎視眈々と狙うことも…(笑)。自家製ヨーグルトに目がなく、自分で戸を開け、容器を倒して食べていたこともありました」
ユニークな記憶の中でも特に印象に残っているのが、緊急入院をしなければならなかった日のこと。
「荷物を取りに家に帰ったとき、向き合って『あのね虎ちゃん、お話があってね。入院するんよ。ごめんね』と話した途端、羽毛布団に粗相をされたのは、今では笑える思い出です」
そんな虎之助くん、実は保護後、しばらくしてからFIP(猫伝染性腹膜炎)の数値が高いことが判明。
「お腹がぽこっと出てきて、元気がなくなったので病院で検査をしたら分かったんです」
FIPは、致死率が高い病。獣医師さんから「覚悟をしてください」と言われた後は、車の中で虎之助くんを抱きしめ、泣いたのだそう。
「こんなかわいい子が、どうしてこんな目に遭わなければならないんだろうって。でも、泣いている私を不思議そうに見つめる虎之助を見て、腹をくくりました。この子が楽しく生きられるよう、毎日を大事にしながら育てようと」
泣いたり悲しんだりすることをやめたみとらさんは自宅で、とにかく虎之助くんが楽しくてリラックスできるように努力。
「せっかく生き延びた命ですから、万が一の場合でも最後に『生きていてよかった』と思ってほしかった」
そんな想いが通じたのか、3歳になるころにはなんとFIPの数値が正常に。虎之助くんはみとらさんに、「病に負けない強さ」を教えてくれたのです。