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宇垣美里「恋って苦しいね。人って愚かだね」/映画『マティアス&マキシム』

 元TBSアナウンサーの宇垣美里さん。大のアニメ好きで知られていますが、映画愛が深い一面も。
宇垣美里さん

宇垣美里さん

 そんな宇垣さんが9月25日に公開の映画『マティアス&マキシム』についての思いを綴ります。
マティアス&マキシム

『マティアス&マキシム』より

●作品あらすじ:カナダ・ケベックに住む30歳のマティアス(ガブリエル・ダルメイダ・フレイタス)とマキシム(グザヴィエ・ドラン)は幼馴染。  友達の妹から頼まれて、彼女の撮る自主短編映画で男性同士のキスシーンを演じることになった二人でしたが、その偶然のキスをきっかけに秘めていた互いへの気持ちに気付き始めます。  美しい婚約者のいるマティアスは、思いもよらぬ相手へ芽生えた感情と衝動に戸惑いを隠せません。一方、マキシムはこれまでの友情が壊れてしまうことを恐れ、想いを告げずにオーストラリアへと旅立つ準備をしていました。迫る別れの日を目前に、二人は抑えることのできない本当の想いを確かめようとしますが――。 『たかが世界の終わり』『Mommy/マミー』でカンヌ受賞経験もあるグザヴィエ・ドラン監督が、マキシム役で主演するラブストーリーを、宇垣さんはどう見たのでしょうか?

親友に芽生えた予期せぬ感情、その揺れる思いは誰もが味わったはず

マティアス&マキシム

『マティアス&マキシム』より

 こんな気持ち、ずっと知らないままでいられたらよかったのに、と思うことがある。  その人と話しているだけで幸せで、隣にいると嬉しくて、ただただ相手の幸せを願う。そんな優しい愛だけを抱いていられたら、どんなにか穏やかに生きられただろう。優しい人間でいられただろう。でも、些細(ささい)なきっかけで、なんてことない一瞬を機に、その想いに気づいてしまったら、もう後には戻れない。
マティアス&マキシム

『マティアス&マキシム』より

 マティアスとマキシムは知ってしまった。たった一度キスをしたばっかりに。  制御できない思いに戸惑う2人。大切な親友であるからこそ、失うことが恐ろしくて、気持ちに蓋(ふた)をして距離をおいても、恋しさは募るばかり。好きで好きでどうしようもなくて、ままならなさのあまり相手を傷つける言葉が口から転がり出る。  その末に思いを爆発させ互いを求めるシーンは官能的でいて切なくて、ヒリヒリとした胸の痛みに涙が止まらなくなった。  恋って苦しいね。人って愚かだね。彼らの眼差しの切実さは、言外に宿る感情の機微は、人を愛したことがある人なら誰しも覚えのある感覚だ。在りし日の自分を思い出して、こらえ切れずため息が出た。  ラストの表情があまりに美しくて、眩しくて、さわやかで、胸を締めつけて離さない。ああ、よかったと安堵した。  彼らはどんな決断を下すんだろう。どこへ向かっていくのだろう。道は無数にある。どれが正解になるかは誰にもわからない。けれど、どうかその道の先に光多からんことを。人が人を想うことはどんなに困難でも尊く美しいものであるはずだから。  この作品には、愛のすべてが詰まってる。 マティアス&マキシム』 ’19年/カナダ/2時間 監督・出演/グザビエ・ドラン 配給/ファントム・フィルム  ©2019 9375-5809 QUEBEC INC a subsidiary of SONS OF MANUAL <文/宇垣美里> ⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
宇垣美里
’91年、兵庫県生まれ。同志社大学を卒業後、’14年にTBSに入社しアナウンサーとして活躍。’19年3月に退社した後はオスカープロモーションに所属し、テレビやCM出演のほか、執筆業も行うなど幅広く活躍している。
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