あれはある到着ヘルプに入った日のこと。
ターンテーブルをまわる荷物のほとんどがピックアップされ、お客様の姿もなくなり……。って、あれまだひとつだけスーツケースが残っているではありませんか。
バゲージクレームタグからお客様情報を調べると、このフライトで帰国した3人組の日本人女性グループのうちのひとりのものだとわかります。年齢も分かるのでキョロキョロと視線をさまよわせて探すのだけど、あたりにそれらしき人は見当たらず。
これはまずい、税関を抜けてしまっていたら手続きが大変になるぞと背中を冷たい汗が流れます。
「
〇〇航空△△便××よりご到着の□□様!!」
大きな声で呼びかけてまわるも反応はありません。バゲージクレームエリアをグルッと一周、すると出口寄りのトイレのほうから女性数人の話し声が。
「恐れ入ります、〇〇航空をご利用の□□様でいらっしゃいますか?」
「はい、そうです。私、荷物を取り忘れてしまって」
「お荷物のタグの控えを確認させてください」
ひとつだけポツリと残されたスーツケースのタグと一致しました。ホッと一安心。
「
すみません、旅行の話しに夢中になって荷物の存在を忘れてしまったんです」
ほかのふたりは荷物を預けていなかったこともあり、つい一緒に歩いてきてしまい途中で思い出したのだそう。思い出してくれて本当によかった!
この「まさか!」と思うスーツケースの忘れ物には在職中何度か出会いました。確か、家族連れの旅行でお子様のバッグだけを取り忘れたケースと、ふたつ預けた荷物のひとつの存在を忘れてしまったケース。疲れていたり、急いでいたりするとこのようなことが……起こることもあるのですね。
ちなみに出発業務にあたっているときの忘れ物でビックリしたのはパスポートでした。チェックインを終えパスポートと搭乗券、eチケットの控え、バゲージクレームタグをお客様に渡した後輩のAちゃん。ちょうどそのお客様の手続きを終えたタイミングでカウンターを閉め、ほかの業務にあたるために移動しようと思っていた矢先です。
「
先輩、パスポートが!」
あろうことか、チェックインカウンターのお客様側にそれは置かれていました。ちょっとした荷物を置くことができるスペースがあったのですね。何かの拍子にパスポートを置いてその場を離れてしまったのでしょう。これ、本当に危険!パスポートを誰かが持ち去り、悪用されてしまうことだってあるのだから。
そもそも、パスポートも搭乗券もなかったら保安検査場を通れないのでチェックインカウンターに戻ってくるとは思うのですが……。そのお客様も保安検査場でパスポートがないことに気付き、走ってカウンターに戻ってきました。
みなさまも忘れ物にはくれぐれもお気を付けください……。こと、空港においては。
―グランドスタッフの裏話 VOL36―
<文/高木沙織>
⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】高木沙織
「美」と「健康」を手に入れるためのインナーケア・アウターケアとして、食と運動の両方からのアプローチを得意とする。食では、発酵食品ソムリエやスーパーフードエキスパート、雑穀マイスターなどの資格を有し、運動では、骨盤ヨガ、産前産後ヨガ、筋膜リリースヨガ、Core Power Yoga CPY®といった資格のもと執筆活動やさまざまなイベントクラスを担当。2021年からは、WEB小説の執筆も開始。Instagram:
@saori_takagi