FIPには「ウエットタイプ(急性型で腹水・胸水などが溜まる)」と「ドライタイプ(慢性型で神経症状や肉芽腫が起こる)」がありますが、もずくくんはウエットタイプ。やがて、腹水が溜まったお腹は引きずるくらいの大きさに。かおちさんは治療の選択を迫られることになりました。
「もずくはFIP以外に、輸血し続けないと治らないほど酷い貧血だったので、日本で未認可の薬はどういう影響をもたらすか分からないと言われました。また、薬で仮に症状が治まったとしても、人間と違って猫の輸血はなかなか見つからないこともあり、緩和療法を選ぶことにしました」
助けたい命を助けられない、もどかしさ。そんな葛藤を抱えながらも、かおちさんはもずくちゃんを支え続けました。
「ご飯を食べないと栄養失調になり、すぐに身体が弱ってしまうのですが、腹水の影響で食が細くなっていって……。だから、いろんなメーカーのドライフードやウェットフードを試し、少しでも食べられるご飯を探しました」
闘病から1か月ほど経った2月13日、もずくちゃんはかおちさんのそばで、静かに息を引き取りました。
「前日から呼吸が荒くて。楽な体制を維持しながらお気に入りのソファーの上で寝ていたのですが、それから数時間後、朝起きたら隣で亡くなっていました。悲しい気持ちはもちろんありましたが、1か月間、辛い闘病をしたもずくに対し、ようやく楽になれたねという思いもありました」
深い悲しみを感じていたのは同居していたテグーのねぎちゃんも同じだったよう。2匹はほどよい距離感を保ちながら生活していましたが、火葬業者が亡骸を引き取りにきたとき、ねぎちゃんはいつもとは違う鳴き方をしていたそう。
「もしかしたら、ねぎも一緒に暮らしていた家族がいなくなってしまった悲しみを声にしていたのかもしれません」