
そんなある日、彼の不満が爆発。「Aはいつも俺に『ありがとう』の一言もない!」「こんなにしてやってるのに感謝がない!」と怒りだしたそうです。それでも謝らないAさんに更に腹を立てた彼は、「俺がいなきゃ生きていけないくせに!!」と怒鳴り、とんでもない暴挙に出ました。
「簡単には開けられない包みを目の前に投げつけて『開けてみろ』と言ったり、膝に置いていた私のスマホやバッグを床へ投げつけて『拾ってみろ』と命令したり。指が動かないため、主に電子マネーを使う私に『小銭を使って俺に自販機で飲み物を買ってみろ』って無理難題を言ってくるんです。そうやって『できないだろ? 俺がいないとお前は何もできないくせに』と、精神的に追い詰めようとしてきました」
ほかにも、怪我をしない程度の暴力や、帰宅しないと怪しまれる時間まで軟禁したりと、DVはエスカレート。
「数時間で解放されてホッとしましたが、最後にツバをかけられました」
奥さんを殴る前にカーテンを閉める人の話を聞いたことがあります。DVを働く人って、知恵だけは回ることが多いんですよね。その後の彼の行動も、DV男の典型です。
「それから毎日、電話やメールで罵ってきたかと思うと、今度はしおらしく謝ってきたりを繰り返しました。休日には私の家の近くの画像が添付されていたり。急に縁を切ると危ないので、会わずにメールだけ続けました。その中でわかったのは、なんと彼はバツイチではなく、妻帯者だったこと。『妻は男を作って出ていった』と言っていましたが、実はシェルターに逃げていたらしいんです」
つまり、彼はDVの常習犯だったんです。でもかたくなに会わずにやり過ごし、数か月かけて無事に彼と縁を切れたとか。当時を振り返って、Aさんは言います。
「『自分は障害者だから』と妥協して相手を選ぶと、自分自身も楽しくないし、いい関係になれない。お互いのために良くないと気づけました」
障害に限らず「私なんか」と卑下して、そこに付け込む相手に寄ってこられると、不幸しか待っていませんね。
とんだDV男を引き当ててしまったAさんですが、数年前に優しい彼と恋活アプリで出会い、幸せに過ごしているそうです。
<取材・文/和久井香菜子&ブラインドライターズ執筆部>
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