――HPVワクチンは自己負担でうつと金額はどのくらいになるのでしょうか?
細部:定期接種の期間を逃して自己負担でうつ場合、1回1万5000~1万7000円程度かかり、3回うつと5万円前後です。
――かなり高いですよね。
細部:非常に高価なワクチンです。2020年7月に日本で承認された世界標準の9価ワクチンは1回4万円程でさらに高価ですが、将来的にはもう少し安くなる可能性もあります。
――HPVワクチン、痛いですか?
細部:そうですね。筋肉内注射の方が痛くないと言われていますが、緊張していると痛く感じるようです。
――HPVワクチンはどのようなスケジュールで接種していくのでしょうか。
細部:計3回打つことで十分な抗体ができると言われています。2種類のワクチンが流通していますので、それぞれ1~2か月の間隔をあけて2回接種し、1回目から6か月間隔をあけてもう1度接種します。
――日本ではいつから導入されているのでしょうか?
細部:2009年に2価ワクチン、2011年に4価ワクチンが日本で接種開始となりました。でも、ワクチン接種後の原因不明の体の痛みなどの症状を訴える方々が報告され、たったの2か月で、国による“積極的な接種勧奨”が差し控えられることになり、「定期接種であることには変わりありませんが、積極的におすすめするのは一時的に中止します」となってしまいました。そのころ、テレビでもけいれんを起こす女の子の姿がセンセーショナルに繰り返し報道されていたので、覚えている人も多いかもしれません。
国による積極的な勧奨がされなくなったことで、日本人はHPVワクチンがどんなもので、子宮頸がんがどんな病気なのか、そして、対象者には無料で受けられるワクチンがあるということすら知らない人が多いのが現状です。
“副反応”とHPVワクチンの因果関係は確認されていない
――現在の接種率は?
細部:定期接種化をしたころは接種率70%以上だったのですが、積極的勧奨が中止されたことでガクンと落ち、現在では0.3%(2017年)となってしまっています。WHO(世界保健機関)の「ワクチンの安全性に関する専門委員会」は2015年に出した声明で「副反応とHPVワクチン接種の因果関係は確認されていない」として、日本の状況を名指しで非難しています。
――海外ではもっと接種が進んでいるんですか?
細部:多くの先進国で接種率が7割が超えるなかで、日本の0.3%は異常な数字です。オーストラリアはワクチン完遂率が80%(2017年)と、接種プログラムがもっとも成功していると言われています。このままいけば、2028年には新規の子宮頸がん患者はほぼいなくなるというシミュレーションもなされています。
――HPVワクチンの接種後に報告されている症状とは?
細部:接種部位やそれ以外の部位の痛み、記憶力の低下、倦怠感、運動障害などの「機能性身体症状」が報告されています。ただ、これらは思春期の女子にはよく見られる症状でもあり、さまざまな調査研究が行われていますが、現在、HPVワクチンとの因果関係は証明されていません。
――どういった調査がされているんですか?
細部:「名古屋スタディ」という国内の研究では「HPVワクチンと接種後に報告されている症状に関連性が認められない」という結果が出ています。名古屋スタディは2015年に、「全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会愛知支部」の要望に名古屋市が応え、名古屋市立大学が実施した調査です。
名古屋市の小6~高3の女子約7万人にアンケートを送付し、約3万人のデータによって得られた結論は、「慢性疼痛」「生理が遅れる」「目が痛い」などの24項目もの症状について、接種した人とそうでない人の間で差が見られなかったというものでした。
患者会の要望に応えて実施した調査であり、河村たかし市長は国会で薬害問題に取りくんだ経験のある方だということで「ワクチンと副反応被害の関連性」を証明したかったのだと思われますが、得られた結果は真逆となりました。2015年12月に速報段階の結果が発表され、名古屋市のウェブサイトにも掲載されましたが、その後、なぜかサイトから突然削除されていたそうです。名古屋スタディの最終報告である論文は、国際ジャーナルの『Papillomavirus Researdh』誌で2018年に発表されています。