「不思議なことに彼と会っている時期は、息子がおねしょをしなかった時期と重なるんです。やはり私のイライラが息子に伝わっていたのか……」

彼からは「どうしてもミサトに会いたい」という連絡が頻繁に入り、ついに彼女は彼とまた会ってしまう。そしてその日に彼とホテルへ行ってしまう。
「いけないとは思っていたけど、もう彼なしでは生きていけないとも思っていました。
恋愛だの不倫だのとむずかしいことは考えられなかった」
彼に愛されることで、彼女は涸れた土が水を吸収するように心身ともに潤っていくのを実感したという。
「あるときラブホをふたりで出て繁華街へと歩いていったとき、偶然、知り合いに会って声をかけられたんです。彼とは少し離れていたし、彼はそのまま歩き去ったので知り合いには気づかれていないと思うけど焦りました。思いがけないことがあるんだ、こうやってバレることもあり得るんだと心臓が口から飛び出しそうで」
それ以来、彼とホテルへ行くときは入るときも出るときも時間差をつけるようにした。彼にも自分にも家庭があることを実感した。だが、別れる決断はできなかった。
「コロナで自粛していた期間も、ただひたすら彼に会いたいと思っていました。
バレたら大変なことになる。そう思いながらも彼への気持ちが止められないんです」
あれほど怖い思いをしたのにやめられないなんて、バカですよねと彼女は自嘲的に言う。だが、それこそが心に空いた穴を埋める恋の魔法なのかもしれない。
<文/亀山早苗>