それから彩花さんは出産。子どもが生まれたこと自体は夫も喜んでくれた。しかし、育児には一切参加しない。帝王切開だったのでお腹の傷が痛すぎて文字通り動けず、その間は産後ヘルパーを呼ぶなどしてどうにか乗り切ったが、夫はゴロゴロしてゲームと漫画ばかり。
「夫はおむつを変えたりお風呂に入れたりするのも、ちょっと経験するお試し程度。何より、何度教えてもミルクを作れないんです。
あるとき、私が用事で3時間だけ外出しないといけなくなったときがありました。まだ新生児だったので2~3時間ごとにミルクが必要な時期です。それで、ミルクをあげないといけない時間だったのですが、赤ちゃんが寝ていたので『この子が起きたらミルクをあげてね』と伝えて家を出て帰宅したら、空腹で赤ちゃんがワンワン泣いているんです。そして夫はそれをどうにかして泣き止まそうとあやしている。『ミルクは?』と聞いても『あなたが3時間後帰ってくるのがわかってるからあげてない』と言われて。
で、夫はミルクを作ろうとせず何かを探しているんです。実は赤ちゃんってビニール袋のカサカサ音を聞かせると泣き止むという裏ワザがあって、彼は袋を探していたようなんです。で、ビニール袋なんて家にたくさんあるのですが、彼は私が以前使っていた無印良品の白い袋でないとダメだと思って、それを探していたらしいです。もう本当に意味がわからないです……」
あまりにも夫と心が通じ合えない彩花さん。出産して3ヶ月後、夫と別居をした。
家を出たあと、しばらく滞在した某県。「乳飲み子を抱いて海を見ながら、子どもの将来を考えました」(本人撮影)
今は別居して1年ちょっと経つ。シングルマザーは大変そうというイメージがあるが、とても楽になったと彩花さん。
結婚しているから幸せ、子どもがいるから幸せ。そう受けとってしまいがちな私だったが、彩花さんの壮絶な体験を聞くとそうとは言い切れないと、絶句のオンパレードだった。今後、彩花さんが健やかに育児していけることを願うばかりだ。
<取材・文/姫野桂>