ドラマでコロナをどう描くか?「半沢直樹」と「#リモラブ」は真逆の英断
新型コロナウイルスのまん延により、“新しい生活様式”を受け入れざるを得なくなった昨今。多くのメディアでは、その対応に苦慮している様子が多く見受けられます。
バラエティ番組ではパーテーションの設置やフェイスシールドの装着、十分な間隔での出演などが日常的に見られるようになりました。しかし、そうもできないドラマの世界。作品によってその対応が分かれているようです。
感染の第2波が襲う中、はじまった10月クールのドラマ。このコロナ禍の状況の中で一番目を引いたのは『#リモラブ ~普通の恋は邪道~』(日本テレビ系)ではないでしょうか。
ラブストーリーではありながらも、正面からコロナ禍を扱い、この状況の息苦しさや困難を上手く使いながら、今のリアルがコミカルに描かれています。
波瑠さん演じる真面目でプライドの高い主人公の産業医・大桜美々の、近づきたくても近づけないソーシャルディスタンスな恋――人と関わることが制限されたこの半年、ほんの少しのコミュニケーションで心が楽になったり救われたりしたことは、多くの人が共感に値する経験だったと思います。
『リモラブ』で描かれるリアルさは、ドラマと同じ状況で苦しむ私たちにとって「苦しいのは自分だけではない」という救いになっているのではないでしょうか。
少なくとも半年前には主演や内容のほとんどが決定しているはずの地上波の連続ドラマ。しかも、動画配信の普及によって、コンテンツとして普遍的なものが求められる中、今しかできないドラマに、時間がない中わざわざ取り組んだことは、スタッフのテレビドラマを作ることへのプライドや矜持(きょうじ)を感じさせました。
一方で、あえてコロナ禍の世界に少しも触れずに大成功したドラマもあります。4月放映開始予定から大きくずれ込んで7月に満を持して放映開始された『半沢直樹』です。
顔と顔を接近させて、飛沫をとばしながら罵り合い、会議室で密状態になるその描写。新しい生活様式や三密の回避などどこ吹く風の世界観でした。
それはリアルと言うよりエンターテインメントを追及している『半沢直樹』だからこそのあっぱれな対応でした。誰か一人でも感染者が出れば手のひら返しされることを承知の上で、このように作るという決断は、制作者側にとっては非常に責任が大きいものだったことでしょう。
視聴率的にも、話題性でも、そして感染者を出さなかったという意味での『半沢直樹』の成功は、その後のドラマを作るにあたっての一つの基準となりました。
まだ対応が分かれ、多くが周囲の足並みをうかがっている中、先陣を切って「コロナのない世界を描く」ことを選んだ『半沢直樹』。賛否両論の中でも、作品の内容を重視しまっすぐに追及した姿勢は、作り手の気概を感じさせるものです。
その熱の入った意識が視聴者にも伝わり、『半沢直樹』が多くの人に愛されたことに繋がっているのかもしれませんね。
正面から扱うことで、リアルに描く『#リモラブ』
密状態で飛沫をとばす、別世界を描いた『半沢直樹』
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