宇多田や松田聖子をカバー、エレカシ宮本浩次の傑作がチャート1位に
4人組ロックバンド「エレファントカシマシ」のボーカリスト、宮本浩次(54)が絶好調です。宇多田ヒカル(37)、松田聖子(58)、中島みゆき(68)など女性アーティストのカバーアルバム『ROMANCE』(11月18日リリース)が、ビルボード、オリコンのそれぞれでアルバムランク1位に。バンド、ソロを通じて自身初のことなのだそう。
『スッキリ』(日テレ)、『ヒルナンデス!』(日テレ)、『あさイチ』(NHK)などの情報番組にも積極的に出演し、プチブーム状態になっています。
エレカシ時代から、「悲しみの果て」(1996年)や「今宵の月のように」(1997年)などのヒット曲を持っていましたが、近頃のウケ方は、その頃とは少し違うように感じます。
男臭く骨太なバンドサウンドを全面に押し出したエレカシのヒットが太い音が持つ説得力によるものだとすれば、女性の曲を歌う宮本浩次の人気は、視覚と情緒に訴えかける、より総合的なアプローチの成功例なのではないでしょうか。
とはいえ、宮本自身のパフォーマンスやキャラクターに、大きな変化が見られるわけではありません。ステージを縦横無尽に動き回り、裏声と地声の境界線で、際どいシャウトを連発する。歌番組で披露した「ロマンス」(岩崎宏美)や「異邦人」(久保田早紀)なども、変に曲におもねっていませんでした。アレンジに合わせて、トーンとテンションは落としつつも、朗々と荒ぶる宮本浩次の歌に昇華していた。
そんな風に、世間との折り合いをつけたロックシンガーの成熟した姿に、静かに感動してしまったのです。過去の焼き直しでも、セルフパロディでも、余生の嗜みでもない。音楽の確かな迫力と、同時に整ったサービスとしてのエンターテイメント。これが絶妙なバランスで両立しているのですね。
このしたたかなパフォーマンスを考えるうえで忘れられないのが、宮本のスタイルなのだと思います。エレカシからソロまで、一貫してモノトーンしか着ない。この継続性が視覚にアピールする力は計り知れません。ボサボサのロングヘアに、黒のセットアップ。それを見た瞬間に、宮本浩次を聴くための前提が出来上がる。
バンドやプロデュースは変わっても、軸となる目印として、まずはビジュアルで“その人”を確認するわけですね。
最近のアーティストは、新曲のたびに色々な服に着替えて、華やかでオシャレで楽しい。しかし、はっきりとしたシルエットが定まらないまま、とっかえひっかえしていると、かえって音楽の印象がぼやけてしまう危険性があります。
すべて女性が歌った名曲のカバーに感動
「モノトーンの服にボサ髪」で通す宮本浩次
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