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宮迫不在の『アメトーーク!』が絶賛されるワケ。“生きづらい人々”に優しい企画

欠点いじりから個性重視の目線に変貌

 このような企画が比較的目立ってきたのは、転機として2019年に闇営業問題により司会であった宮迫博之さんが消えてからではないでしょうか。  彼が出演しなくなってからの『アメトーーク!』は、執拗ないじりや欠点のあげつらいが目立たなくなり、若手ベテラン区別なく出演芸人さんの、のびのびと自由なトークを笑って聞ける空気感になっているように見えます。
「アメトーーク! DVD 3」(販売元: よしもとミュージックエンタテインメント)写真はアマゾン販売ページより

画像:「アメトーーク! DVD 3」(販売元:よしもとミュージックエンタテインメント)Amazon販売ページより

 人気企画「運動神経悪い芸人」「踊りたくない芸人」も、以前は欠点いじり的な取り上げ方をされていましたが、今は不思議なことに“それも個性”“人気者でもこんなに情けない一面を持つ”というような印象になっています。  誰も傷つけない笑いが賞賛されている昨今、「稲ちゃん(アインシュタイン稲田)カッコいい芸人」など、やり方を間違えればいじめだと批判が起きそうな企画でもどこか優しく温かい目線になり、登場する芸人さんの個性を引き立たせるようなものになっています。

クリーンを求める世の中で、あえてダメさを包み込む

 また、コンプレックスものだけでなく、「ついつい深夜に食べすぎちゃう芸人」「私生活芸人っぽい芸人」「ついついネットで買っちゃう芸人」など、自分に甘い生活をしている人を受け入れるような企画も昨今では目立ちます。健康的でクリーンなものが求められる世の中で、あまり褒められないような傾向をあえて肯定。  どんな食べ物でも理由をつけて「カロリーゼロ(だから食べてもいい)」と押し通すサンドイッチマン伊達さんの名言が出たのもこれらの括りの企画の中でした。出演している芸人さんたちが面白おかしく語る、クズ感あふれるエピソードの数々は、健康的で清らかな社会に適応できず息苦しさを感じている人々に対しても「それでもいいんだよ」と優しく語りかけるような包容力さえ感じます。  また、逆に「奥さん大好き芸人」「夏フェス行きたい芸人」など、斜めに構えて見られがちな括りの人たちを取り上げた企画もあり、それらも同じように好評を博しています。  昨今、多様性を考慮し、理解することが求められ、テレビにもそれらを踏まえたうえでの番組制作が求められています。しかし、バラエティで正面からそれを扱うと説教臭くなってしまいがちです。  しかし、今の『アメトーーク!』は一切押しつけがましくなく、多様性の理解を訴えているように見えます。実際、『アメトーーク!』の「お肌よわよわ芸人」を見て、肌の弱い人の苦悩を知り理解が深まったという意見や、「踊りたくない芸人」でどんなに頑張ってもダンスができない人の存在を知ったという人もいるようです。  話題になった「40歳過ぎてバイトやめられない芸人」も、何かと偏見で見られがちな非正規労働者や夢を追いかける人たちから共感の声があがったとか。  今を生きる多くの生きづらい人々へ、笑いというエールを送る『アメトーーク!』。これからもバラエティ溢れる素晴らしい企画を期待します。 <文/小政りょう>
小政りょう
映画・テレビの制作会社等に出入りもするライター。趣味は陸上競技観戦
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