長女の小学校受験の面接に、夫は来なかった。ちょうど海外出張が重なってしまったのだ。アヤナさんは夫を拝み倒して、出張中だという証明書をもらった。面接にあたっての書類は,アヤナさんの父が代わりに書いてくれたという。
だが、長女は不合格だった。アヤナさんは、それが夫のせいだと思い込んだ。
「夫のせいで、娘の受験がすべて水の泡。その2年後の長男の受験のときも夫は,息子をそそのかして遊びにつれて行ってしまいました。試験をボイコットしたんです。うちの父などは『小学校は地元でいいじゃないか』と言いましたが、私は夫を許せなかった」
アヤナさんは、「あなたは私を愛していないんでしょ、だからこんな嫌がらせをするんでしょ」と詰め寄った。
落ち着けよ、と夫は言ったそうだ。子どもの人生を親が決めるな、だいたいきみがそんなに学校の名前にこだわるようなタイプだと思っていなかった、それなら結婚前に言ってほしかった、と懇々(こんこん)と“説教”された。

「夫はずっと公立学校なんです。大学も県立だったらしくて。でも私は小学校から私立でとても楽しかったし、同じような環境の友だちがたくさんできた。多様性って言うけど、小さいときは同じような環境の友だちがいたほうがいいと思うんです」
私立にこだわるアヤナさんは、自分の母校を娘に中学受験させるつもりだ。だが、夫はそれをも全面阻止しようとしているらしい。
「今どき、子どもをたくましく育てようと思っている夫は遅れてると思うんですよね。私立に入れて、子どもの才能を伸ばしてやるのが親の務めじゃないでしょうか。夫はそれを放棄していると思うんですよね」
彼女も、そして夫も子どもの教育でこれほど揉めるとは思っていなかったようだ。
「夫からは、きみがそんなに見栄っ張りだと思わなかったとひどいことを言われました。私がどんなに子どもたちのことを考えているかわかってない。ずっと話は平行線だし、最近はほとんど会話もなくなりました」

夫との間のすきま風をどうにかしたいと思いながらも、彼女は折れる気はない。夫のほうは、もう話し合いをするのも面倒(めんどう)そうだという。
「相手も同じような教育環境で育った人のほうがよかったんだと思います。やさしくていい人だと思ったけど、それだけでは幸せな結婚は続かないのかもしれない」
昔から「釣り合わぬは不縁のもと」という。今の時代でもそれは通用してしまうのだろうか。
―シリーズ「
結婚の失敗学~コミュニケーションの失敗」―
<文/亀山早苗>
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