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発達障害の夫をもつ妻の苦悩。“心が通わない違和感”は理解されにくい

「離婚」という選択が幸せな場合も

 カサンドラ症候群が原因で離婚する夫婦もいますが、真行さんはそれを決してマイナスの離婚とは捉えていません。むしろ、プラスの離婚の場合もあると語ります。 「カサンドラはジェンダーの問題もはらんでいるんです。2020年の日本のジェンダー・ギャップ(男女格差)指数は156カ国中120位と低く、たとえば、夫からDVやモラルハラスメントを受けている妻が、夫から離れたいと考えていても、経済的に自立していないことで諦めてしまうケースがよくあります。また、必要以上に夫の顔色を伺い、限界を越えた我慢をしている妻も少なくありません。  私の個別相談のゴールというのは必ずしも一緒にいることではなく、いかにお互いが幸せでいられるかということなのです。そうすると、離婚や別居という選択が幸せな場合もあるのです」 離婚 しかし、妻が離婚を望んでいても夫が離婚をしたくない場合はどうなるのでしょうか。その場合、間に弁護士を入れて対応しているケースが多いと言います。  なぜ離婚したくないのかの理由は人によって違います。婚姻届を出して作った家族という形にこだわりそれを壊したくない人、子どもに固執(こしつ)している人などじつに様々だそう。  また、最近ではコロナ禍で在宅勤務が推奨され、夫婦で過ごす時間が増えたことも、カサンドラに影響を与えているといいます。カサンドラは適度な距離を取ることが一つの解決法として有効とのことですが、テレワークによりそれができにくい状況になっています。この解決法としては、難しいところではありますが、コロナ禍でも、外出できる先があるなら少しでも一緒にいる時間を減らしていくことが効果的とのことです。また、家庭内でも夫のエリアを決めて家の中であまり接触しないように工夫することも挙げられます。

苦しくても、発達障害者の存在自体を否定しないで

 そして最後に真行さんは、発達障害者とカサンドラ症候群の人の関係性についてとても重要なことを語ってくれました。 SNS「SNSや掲示板などで、カサンドラと思われる方による発達障害者を貶(おとし)めるような書き込みや、カサンドラと発達障害者の対立構造を感じることがあり、とても胸が痛みます。カサンドラ症候群は、パートナー間の関係性の問題です。ですから、発達障害者の存在自体を否定したり、悪者を作らないで、とお伝えしています。  発達障害に対する理解や社会的な支援制度はまだまだ十分ではなく、そのことがカサンドラに対する理解や支援の不足にも繋がっています。発達障害者が生きやすい世界はカサンドラの人が生きやすい世界でもあるのです。すべての人が尊重され生きやすい共生社会を目指し、私たちは活動しています」 【真行結子】(しんぎょう・ゆいこ) 発達障害特性のあるパートナーを持つ人たちの居場所「フルリール」代表。シニア産業カウンセラー。自身もカサンドラ症候群に陥った体験から、カサンドラ支援団体「フルリール」の活動を開始。著書に『私の夫は発達障害? カサンドラな妻たちが本当の幸せをつかむ方法』。 <取材・文/姫野桂>
姫野桂
フリーライター。1987年生まれ。著書に『発達障害グレーゾーン』、『私たちは生きづらさを抱えている』、『「生きづらさ」解消ライフハック』がある。Twitter:@himeno_kei
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