「返さなくて良い」の意思表示があったかはどう判断する?
今回の小室さんの文書では、金銭授受について、
一部は贈与、一部は貸付であったが、貸付部分は母親の損害賠償請求権と清算されたという主張をしています。贈与額と貸付金の割合も示されず、かなり技巧的な法律構成をしているので、報道でも小室さんの意図を正確に汲みとっている識者は多くないようです。

女子SPA!編集部作成
――小室さんが発表した文書の「注9」によれば、元婚約者が返済免除の意思表示をして佳代さんの損害賠償請求と清算されたとのことですが、素直に腑(ふ)に落ちない印象を持ってしまうのはなぜなのでしょうか。
長谷川「『この考え方はあくまで過去の出来事を振り返って法的に評価をしていただいたものです。』と小室さんも自認するように、
まさに後付けだからです。貸付と損害賠償請求が清算されたとする「注9」のくだりは、
延々と屁理屈をこねている印象しかありません。「注9」で貸付金の存在を認めながらも、借金を認めることになるので返さなかった旨の主張をするなど、
現時点でも矛盾だらけです。一介の法律家然とした言い回しで、事後的に客観的評価を加える体裁をとっていますが、他人事のように不合理な主張内容を堂々と大展開する点に、皆さんは違和感を覚えるのでしょう」
――小室さんは公表した文書のなかで、元婚約者の「お金を返してもらうつもりはなかった」という発言を録音したテープをもっている、と主張しています。これは裁判でも大きな証拠になるのでしょうか。
長谷川「小室さんが主張している録音テープは、
返済免除の意思表示の証拠としては弱いと思います」
――テープなどの録音では、証拠として弱いということですか。
長谷川「そうではなく、返済免除の意思表示があったかどうかはあくまで総合評価で判断されます。この証拠があるからあった、この証拠があるからなかった、というように1つの証拠だけでは確定的に決まらないことが多いのです。
元婚約者も、『生活費をお借りしてもいいでしょうか』と佳代さんから送られてきたメールを、証拠としてもっていますよね。金銭交付当時における貸付のやりとりがはっきりと記載されており、その後も一貫して返済を求めている証拠もあるわけです。よって、返済免除などしていないと主張する元婚約者にとってはこれらがとても強い証拠になると思います。
一貫して借金返済を求めている元婚約者の行動を、小室さんの切り取り証拠である隠し撮り録音は合理的に説明できません」

――たしかに、佳代さんは複数のメールで、元婚約者に金銭の援助をお願いしています。
長谷川「これに対して、小室さんの持っている録音テープは、小室さんも認めるように切り取られた会話の一部分のみです。日記やメモなどでも、裁判所に証拠として提出するには、その前後も含めて全て提出しないといけないんです。
一部分だけを切り取って証拠として提出しても証拠の価値は低いのです」
――テープの中で、元婚約者が「返してもらうつもりはなかった」と、はっきり言っていてもダメですか。
長谷川「
『返してもらうつもりはなかった』という前後の会話を聞かなければ、その発言の真意はわかりません。家族となる以上、当時はビジネスライクな気持ちで貸したわけではない旨を意味するだけかもしれませんし、佳代さんと小室さんの2人から婚約破棄の慰謝料をほのめかされて恐怖を感じ、その場を収めるために発言した可能性もあります。全額を一括で返済しなくてもよいという趣旨で、債権回収の緊迫した空気を和ませる目的で言ったのかもしれません。いずれにせよ、会話の全体がわからないので、発言の真意が読めないのです」