突然の退職勧奨に前原さんは納得できるはずもありません。どうして辞めなければいけないのか食い下がったそうです。

「詳しい理由は説明してもらえず、人事部長は面倒くさそうに『執行役員の総意だから』と繰り返すだけ。
いつもはニコニコしていた人でしたが、そのときはひどく意地の悪い顔をしていたことを覚えています。『この人、こういう顔をするんだ』と、怒りで震えながらもどこか冷静に部長のゆがんだ頬を見ていました」
最初は「絶対に辞めない」と思っていた前原さんですが、会社から「
辞めてほしい人間」と認定された以上、働き続けることはできないし、そうしたくないと思ったそうです。
「その代わり、この退職勧奨がいかに理不尽なものであるか会社に示したいという思いが芽生えました。私一人で主張しても、鼻で笑われるだけだろうと思ったので、弁護士さんへ相談することにしました」
一睡もできないまま朝を迎えて、何ヶ所かの弁護士事務所へ電話をしたそうです。「
退職金がもらえるならそれでいいじゃないか」という返答が多い中、前原さんの思いをくんでくれる弁護士が現れます。
「これが最後だと思って電話した弁護士さんが『おかしな話だ』と共感してくれました。翌日、改めて事務所を訪ねると『
退職金を増額できないか交渉してみましょう』と提案をしてくれました」