クマパパの投稿を演出することで、佐伯さんの生活にメリハリが生まれている。そして彼同様、ぬいぐるみを自分のアバターにしているのは、ライターの
熊山准さん(47歳)。ぬい撮り歴20年以上の筋金入りのぬいぐるみマニアだ。
「パターン工数の多い、作りが丁寧なぬいぐるみに愛を感じる」と熊山さん
「かつてエベレスト街道のトレッキングに行ったとき、飛行機のトラブルで1週間の行程が3日に短縮。超過酷な行程でしたが、自宅で待つぬいぐるみに会う。それを心の支えに何とか乗り切りました」
10年前には自身のオリジナルアバター“ミニくまちゃん”を5万円ほどかけてオーダーメイドした。
「ミニくまちゃんを含めたスタメンが4人、正規メンバーは6人、そして二軍は5人と、ぬいぐるみの総数は『15』になります。二軍はタグを切っていないので僕の中では“玩具”のまま。『早く切って』と恨めしそうに僕を見てきます」
一方のスタメンと正規メンバーはどちらも“家族”だが、スタメンのほうが名前を呼ぶ回数や話しかける回数が遥かに多い。熊山さんと旅に行けるのも彼らの特権だ。
「機転が利いて社交的なカメちゃんや、寡黙で朴訥なあかニャンなど、スタメンにはそれぞれの“人柄”や“性格”など、プロフィールがあります。スタメン4人が揃って10年目。やっと家族としての絆が深まってきた印象です」
アメリカでドライブ旅行したときの一枚。”あかニャン”と一緒に
ここまで、男性たちの熱いぬいぐるみ愛を見てきた。こうした男性が増えている背景を、大阪阿倍野まことカウンセリングルーム院長である砺波忠氏はこう分析する。
「学校教育でも“~さん”で呼び方が統一され、男らしくや女らしくという育て方が今では少数派になり、社会全体が“中性的”な流れに向かっているのが大きいのかもしれません。逆に、ドールハウスを愛する主人公が、『気持ち悪い』と彼女にフラれる場面を描いたドラマがありますが、こうした『男性は~。女性は~』という固定観念に縛られていると、これからの社会では生きづらいでしょう」
ぬいぐるみに安心感を覚えるのは、赤ちゃんを愛でるように、人間に備わっているかわいがり願望の表れ。「『ライナスの毛布』のように、常に何かに執着していないと安心できないのなら話は変わりますが、そうでないならペットをかわいがるのと同じです」と砺波氏。
「ぬいぐるみを愛でることで、“幸せホルモン”と呼ばれるセロトニンが分泌されるので、精神衛生上はとても有効な行為なんです」
ジェンダーフリーが叫ばれる昨今、ぬぐるみが「女性・子供のもの」という社会的な認識はもう古い。大人の男性だって、ぬいぐるみを抱いて寝たい日もあるはずだ。
砺波 忠氏
【砺波 忠氏】
大阪阿倍野まことカウンセリングルーム院長。日本なごみ気功カウンセリング協会会長。これまでのカウンセリング数は1万件超。全国各地で講演も行っている
<取材・文・撮影/谷口伸仁 取材/小西 麗>