DVから逃げた後の貧困。離婚前の“プレひとり親”を苦しめる「制度のすき間」
子育てしているのに、児童手当を受け取れない理由
離婚前の別居期間に利用できる制度を
間もなく離婚調停が始まるという田中さんは、調停の長期化を案じています。
「離婚調停の呼出状を受け取った夫からは、何度も連絡がありました。返答せずにいたら、担当弁護士のところにも夫から自己弁護に徹した分厚い書類が届けられているようで、別居していても折に触れて夫の影におびえています。
彼はプライドが高く世間体をひどく気にする人なので、家庭の外で常識を逸脱(いつだつ)する行動にでることはないと思いますが、調停は一筋縄ではいかない予感です。当日は夫と顔を合わせたくありませんが、待合室をあちこち探し回るのではないかと今から不安で仕方がありません。
今回のことでひとり親の支援について調べてみたら、以前と比べて制度がかなり手厚くなっていることがわかりました。でも、離婚成立後でないと利用できない支援や手当もあるので、私のような今別居中で離婚前の立場でも使えるものが増えて欲しいと思います」
プレシングルマザーは経済的にひっ迫した状態に陥りやすいだけでなく、住み慣れた地域を離れることで母子が社会的に孤立するなど、様々な要因で心理的なストレスが増大しやすくなっているようです。
現在は、新型コロナウイルスによって家庭内の精神的・肉体的暴力の増加や、女性の雇用環境の悪化などの影響も生じています。弱い立場に追い込まれた女性を取り巻く環境が急速に悪化する中、制度のすき間からこぼれ落ちる人がいないよう、新たな支援策が必要となりそうです。
<取材・文/北川和子>
北川和子
ライター/コラムニスト。商社の営業職、専業主婦を経てライターに。男女の働き方、家族問題、地域社会などをテーマに執筆活動を行う。



