精神科に入院した女性が、平和すぎる一日に「怖さ」を感じた理由
コロナ禍をはじめ、さまざまな理由でメンタルの不調に陥ることは誰しもあるものです。
厚生労働省による調査(※)によれば新型コロナウイルスの感染拡大にともない「そわそわ落ち着かなく感じた」と答えたのは、女性の30代が42.9%、40代41.0%とすべての世代の男女の中で最も高い数字を示しています。(※2020年9月「新型コロナウイルス感染症に係るメンタルヘルスに関する調査」)
うつ状態により入院も経験したフリーランスライター、カンザキルリ子さんに、その経緯や思いをつづってもらいました。
前回で思いがけず医師にすすめられて入院することが決まったルリ子さん、いよいよ病院生活の始まりです。(以下、カンザキルリ子さんの寄稿です。)
【前回記事を読む】⇒どうして私は精神科に入院したのか。コロナ下で40歳を迎える女性の手記
精神科病棟に入院することが決まってから、私はちょっとワクワクしていました。自分を助けてくれるものに出会えたことから、この時点で日々の苦痛が少し抑えられたように思います。さて、どんな入院生活になるのでしょうか。
入院初日、15時の診察に間に合うよう車で病院に向かいました。1時間半の道のりの中で、またいつものように私をイライラさせる出来事が起こりました。前を走る車が急にブレーキをかけて止まったのです。何かと思えば、高齢の男性が車に会釈をしながら手を挙げて道路を渡っていたのでした。
嫌な予感がして後ろの座席を見ると、案の定倒れないように用心して載せていたテレビが座席から転げ落ちてしまっていました。急いで道路の脇に車をとめ、テレビを起こしました。見たところ異常なし。ホッとしましたが、「急ブレーキをかけさせないでよ」と私はすっかり気分を害して頭をカッカとさせ、スピードを上げて病院まで走ったのでした。
こんな大したことない出来事であんなにも不快になったのは、これが最後になりました。

入院のための診察と手続きを終えると、私がこれから生活する病室に案内されました。ベッドが手すり付きの病院用であることを除けば、ちょっとお洒落なビジネスホテルの一室のような個室です。大きな窓から光がたっぷりと差し込み、落ち着いた色調の壁には素敵な絵が掛けられています。天井の間接照明はモダンな雰囲気を醸し出していました。
精神科病棟というと、窓が小さかったり、鉄格子があったり、殺風景で冷たいイメージだったのですが、最近はずいぶん明るくてきれいで開放的な場所に生まれ変わっているようです。そのおかげもあってか、上品な香りのアロマが焚かれたラウンジで過ごす患者さんたちは、避暑地に療養に来たかのような風情にも見えます。
入院初日、車でイライラしたのが最後

ホテルのようにお洒落な病棟
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