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どうして私は精神科に入院したのか。コロナ下で40歳を迎える女性の手記

 メンタルヘルスの不調と聞いて、自身や周囲の人たちに思い当たることはないでしょうか。    最近“コロナうつ”という言葉をよく見かけますが、厚生労働省による調査(※)によれば新型コロナウイルスの感染拡大にともない「そわそわ落ち着かなく感じた」と答えたのは、女性の30代が42.9%、40代41.0%とすべての世代の男女の中で最も高い数字を示しています。(※2020年9月「新型コロナウイルス感染症に係るメンタルヘルスに関する調査」)    コロナ禍の影響だけではなく、メンタルの不調に陥る原因は様々で複合的でしょう。うつ状態により入院も経験したフリーランスライター・カンザキルリ子さんに、その経緯や思いをつづってもらいました。(以下、カンザキルリ子さんの寄稿です。) 
,雨、 傘 不調

写真はイメージです(以下、記載がないものは同じ)

入院前夜〜どうして私は入院したのか〜

 これは今年で40歳を迎える私の2ヶ月間の入院記録。入院していたのは精神科の病棟です。  診断書には「うつ状態」と書かれています。私の担当医さんには「アイデンティティ・クライシス」と言われました。初めて聞いた言葉でしたが、なんとなくわかる気がしてじんわり涙があふれてきたのです。 「アイデンティティ・クライシス」とは、デジタル大辞泉によると、「自己喪失。 若者に多くみられる自己同一性の喪失。『自分は何なのか』『自分にはこの社会で生きていく能力があるのか』という疑問にぶつかり、心理的な危機状況に陥ること」。 「若者に多くみられる」って、どうもそうとは限らないようですね。私、40歳になるのがすご〜く嫌だったんです。  同級生に話してみても、私が期待するほどの反応は返ってこなかったので、やっぱり人一倍嫌悪しているように思います。母には「結婚してないからじゃない?」と言われ、なるほどそうなのかもとも。母娘二人暮らしのせいか、気持ちはまだまだ“娘”であるにも関わらず、そうこうしている内にまさかの40歳に。実年齢に心がまったく追いついてないのです。 「うつ状態」となった理由はこれだけではなく、もっと複合的なことからのように感じますが、私の心の世界を見つめ直してみるべく、精神科入院という非日常の記録をここに何回かに渡って書き留めたいと思います。同じような思いを抱えて心を患っている読者の皆さんの参考になれば幸いです。

これといったきっかけはないけれど

夜空と雲 気が付けば、1m先も見えない霧の中にいるような気分でした。日記をさかのぼれば、今年1月初めの時点で理由も曖昧(あいまい)なまま、「辛い。どうしたらいいのか、わからない。先が見えない」「誰も聞いてくれない。言っても困るだろう」と書いています。  明らかに調子が悪くなった出来事の一つとして覚えているのは、2月初めにあったいつものインタビュー取材。同行する編集部の偉い男性がちょっと苦手なんです。自身の立場を誇示するようなマウンティングが目立つ人で、取材中に「なんでそんなこと聞くの?」「○○すればいいじゃない」と、ことあるごとに言われます。  確かにライターとして行き届かないところもあるかと思いますが、家に帰ると思い出して腹が立つのです。いつもなら翌々日には気持ちが落ち着くのですが、なぜかこのときは1週間以上引きずってしまいました。  自然と忘れたわけではありません。次に起きた仕事のトラブルでまた頭を抱えてしまい、それどころではなくなってしまっただけです。こうして2週間以上、思い出しては頭の中で相手を罵倒し、現実ではできなかったケンカを繰り返しました。私はすっかり笑顔を失っていました。テレビを観ても笑えないんです。
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新型コロナのせい?
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