
気晴らしをしたくても、この頃緊急事態宣言が延長されたため、出掛けにくくなっていました。友人を飲みに誘うこともできません。気分転換ができると期待していた出張取材も中止になりました。
新型コロナを憎く思います。ですが、新型コロナのせいとばかり言えません。思えば、昨年の5月にTwitterで「コロナが収束したらしたいこと」というハッシュタグを見たときから、ずっともやもやしているようにも思うのです。いろんな人がさまざまな楽しい事柄をつぶやいていました。「私は何をしたいだろう?」
少し考えてみましたが、何も思い浮かばず愕然(がくぜん)としました。答えは「緊急事態宣言が明けても、元の通り仕事をするだけだろう」。私はただ日々を仕事に費やしているだけの何もない空っぽの人間のように感じました。
自分でもわかるほど表情がどんよりして、「誰か助けて」と心の中で繰り返していました。それから、私はやたらと精神科を訪ね回るようになっていました。ですが、イライラや不安を和らげる薬、睡眠導入剤をもらっても、なかなか気持ちが元に戻りません。
そして、4軒目の病院で「驚くかもしれませんが、入院しませんか?」と言われました。私はものの見事に驚いて「まさか」と思いました。入院なんてそんな大げさな。
とりあえず、ということで、看護師さんに病棟を案内してもらうことになりました。ホテルのようにきれいな施設です。
ピンクの可愛らしいゆったりとしたソファが置かれたラウンジで、患者さんが思い思いに寛いでいました。緑が日の光を浴びてきらきらと輝く中庭があり、木目調の壁がモダンな廊下に病室が並んでいます。一番奥には一面ガラス張りの向こうに山々を望むラウンジが。
おしゃれなペンダントライトをいくつも吊るし、色とりどりのクッションが所狭しと置かれたソファもまた心地良さそうでした。

ルリ子さんの入院した病院