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精神科に入院した女性が、平和すぎる一日に「怖さ」を感じた理由

精神科病棟のスケジュール

 そんな病棟での一日は、朝8時の朝食に間に合うように起床することから始まります。ちょっと密と思われる食堂は、このご時世なので会話禁止。ガラス戸の向こうに見える山々を眺めながら、のんびり食事を済ませると、部屋に戻る前にナースステーションでお薬を飲みます。  9時になると、各病室に看護師さんがやってきて検温が行われ、その後はいろんな治療活動が予定されています。日に2度行われている作業療法は積極的に参加するように促(うなが)されていました。陶芸や園芸、お茶会、グラウンドゴルフなどいろんなメニューが毎回用意されています。  週に1度、精神療法の一つである認知行動療法を学ぶ時間があり、また同じく週に1度、心理士さんによるカウンセリングもあります。それから、2、3日に1度は担当医さんに呼ばれて診察を受けます。 診察する医師と患者 18時に夕食をとり、22時に消灯。入院前はいつも夜中3時過ぎに寝て10時くらいに起きていたので、衝撃的なタイムスケジュールでしたが、睡眠導入剤をもらって眠ることでなんとか身体が順応するようになりました。

居心地が良すぎて怖くなる

 忙しそうに見えるかもしれませんが、作業療法と認知行動療法は自由参加です。カウンセリングも必ずしも受ける必要はありません。24時間ナースステーションに詰めている看護師さんは、何かと気を遣ってくれて、優しく話しかけてくれて、気分が悪くなれば心配して寄り添ってくれます。症状に合わせたお薬をすぐに処方してもらうこともできます。  外の世界と違って私を傷つけるものは何もありません。それはそれはとても優しく温かな空間なのでした。居心地がおそろしく良いのです。いや、良すぎると言えます。おかげで私は、このホテルのようにきれいな病棟で過ごすようになってたった数日で、これまでの日々が嘘のように心に波風がまったく立たない穏やかで幸せな時間を過ごすようになりました。ここにいると何もかも許されているような気持ちになるのです。 窓辺の花  実際、私はいつもニコニコしていたと思います。入院日当日には車の後部座席からテレビが転げ落ちただけで悪態をついていたなんて、この病棟にいる誰も信じられなかったはず。それくらいの変わりようでした。だからこそ、しばらくすると今度は怖くなってしまいました。ここを退院するとき、麻酔が切れるように普段の自分に戻ってしまうことが。 【他の記事を読む】⇒シリーズ「ルリ子の精神科入院手記」の一覧はこちらへどうぞ 【他のエピソードを読む】⇒「実録!私の人生、泣き笑い」の一覧へ <文/カンザキルリ子>
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