五輪マラソンの札幌ルポ。“密な観客”と”交通規制でウンザリな人”に話を聞いた
開催についての賛否はあったものの史上最多の金メダルを獲得し、8日に無事閉幕した東京五輪。各種目無観客で行われましたが、5~8日にかけて札幌で開催された競歩とマラソンは市街地コースということもあって観戦が可能。
札幌在住の筆者にとっては一生に一度の機会ですが、新型コロナの1日あたりの感染者数は連日1万人超えで道内でも再び増加している状況です。当初は自宅でテレビ観戦するつもりでしたが付き合いのある地元メディアから声がかかり、スタッフの一員として現地で取材することに。
【画像をすべて見る】⇒画像をタップすると次の画像が見られます
とはいえ、担当するのはレースそのものではなく沿道の様子や住民の反応など。コロナ前から「東京五輪なのになぜ札幌で?」という批判的な声はありましたが、それでも地元では多くの人が競歩とマラソンの開催を好意的に受け入れていました。
ところが、コロナ禍でそんなムードは一変。北海道のコロナ感染者数は全国でも上位です。五輪直前の7月中旬には、開催に反対するデモが行われ、北海道大学大学院生らが中心となって集めた5214筆の競歩・マラソンの開催反対の署名が札幌市長宛に提出されたりもしました。
しかも、男子50㎞競歩前日の4日から、札幌駅から大通公園を経てススキノに至る一帯は連日長時間の通行止め。札幌~ススキノは地下街で結ばれているので移動する分には困りませんが、バスや市電は通行止めの区間を通ることができず、対象区間外の折り返し運行や迂回(うかい)運行に。
それに札幌中心部のこのエリアは商業施設や飲食店も多く、商品や食材の搬入ができずに臨時休業している店舗も。年中無休の牛丼チェーン、すき家でさえも営業休止していました。
「コロナ禍でも最近は少し客足が戻っていたので休業は正直辛いです。地元の人間としては応援したい気持ちがないわけじゃないんですけど……」と語るのはレース期間中の臨時休業に踏み切った大通公園近くの飲食店店長。
また、観光客に人気の二条市場も目の前がコースになっているせいか、筆者が訪れた男子マラソン当日はほとんどの店のシャッターが閉まったまま。普段は早朝から営業している店も多いのですが閑散(かんさん)としていました。
ただし、そこから歩いてすぐ大通公園周辺の沿道は、スタート&ゴール地点ということもあって多くの人だかり。路上には観戦自粛を呼びかけるパネルを下げたボランティアスタッフがあちこちに立っていましたが、そんなのお構いなしといった感じです。
完全に密の状態でしたが、一部のエリアを除けばランナーの姿が見えないほどギャラリーがいるわけではなく、事前の観戦自粛の呼びかけに一定の効果はあったのでしょう。けれど、それでもかなりの人出でした。
夫と来ていた60代の女性は、「個人的には再延期したほうがいいと思ったけど、開催した以上はどうにもならないし、札幌でオリンピックのマラソンなんて二度とないと思うから記念に」と生観戦に訪れた理由を説明。
小学生の男の子と家族3人で応援に駆け付けた30代の主婦も「子供がどうしても観たいって言うので……。ただ、こんなご時世なので観に来たことは誰にも喋っていません(苦笑)」と話します。
札幌中心部は交通規制の影響で臨時休業が続出
観戦自粛と言われても…大通公園周辺は大勢の観客が
1
2