体調がみるみる悪化、逃げる気力もなくなってしまった
「ある夜寝ていると、苦しくて息が吸えなくなって目を覚ましました。そしたら、真っ黒な人影……たぶん女の人かな? わからないけどその影が、私に馬乗りになって首を絞めていたんです。むき出しの悪意っていう感じでさすがに怖かったですね。それからは
謎の倦怠感だったり、食欲不振だったり、日ごとに体調を崩していきました」

なぜすぐにそんな危険な家を出ていかなかったのか不思議ですが、体の調子が悪いと心まで病んでしまうもの。もう冷静な判断もできなくなって、「
健康的な生活をする気力も、引っ越したりして逃げる力も湧かなくなった」とか。そんな堀手さんを変えたのは、母からの一本のビデオ電話でした。
「それまでも『ずっと体調が良くならない』とLINEで相談していたんですが、
『顔色悪いけど大丈夫?』って心配そうに画面を覗き込む母の顔を見て、一気に緊張がとけたのか泣いてしまって。本当は緊急事態宣言が明けたときに、最低限の人数で、父の退職祝いと母の還暦のささやかなお祝いをしようって姉妹で計画していたんです」

当時、4月に発令された緊急事態宣言は解除されていたものの、タイミングが悪く、今度は堀手さんがダウン。
「腹痛とひどい頭痛で布団から起き上がれずに、お祝いの集まりには私だけ不参加。それが母に申し訳なかったのですが、
画面越しの母は小言を言うでもなく、とことん私のことを心配してくれていたんです。なんかもう、涙が止まりませんでした。
そしてその日の夜、ふと目をさますとまた寝室の隅に女の人(?)の姿を見つけて。母への申し訳なさや、体調を崩した自分への怒り。そしてその“きっかけ”の不可思議な現象……。もういろいろ感情が溢れてきて、つい幽霊に本気でキレてしまったんです」