「その人、自殺は自殺でも、浴槽で手首を切ったあと大量の血を見てパニックになって、部屋や廊下に出て『やっぱり死にたくない!』と大騒ぎしたらしいんです。住民が通報して、警察や救急車がかけつけて騒動になったとか。
なにが起きたのか覗きにいった1階のおばあさんの話では、『廊下や玄関に血だまりができていて、そこらじゅうのものを手当たり次第つかんで赤い血の跡や、引きずったような後、血しぶきが結構飛んでいて、地獄絵図だった……』そうです。必死に叫んでいた声を聞いた住民も多かったみたいで、『言葉は悪いけれど、見たり聞いたりした光景がずっと目に焼き付いて、気分がいいものではなかった』と……」
自殺と一言でいっても、実際にその内容や経緯はあまり語られません。その後、残念ながらその部屋は“事故物件”になってしまったようです。
そして事実を知ってから間もなく、不可思議な現象が彼女を容赦なく襲います。
「幽霊なんかいないんだ」と、思い込もうとしたけれど
「まず気になったのは、
2階は私しか住んでいないはずなのに、両方の部屋からドン! ドン! と壁をずっと叩かれている音がするんですよ。それが4回音が鳴るうちの1回が強い“拍”の4拍になったり、3拍になったり。ほかにも、お坊さんがお経を読むときに木魚を叩くような、一定の感覚でずっと地味にドン、ドン、ドン、ドンと」
恐怖体験について話しながら、「不思議と、どこか冷静に観察している自分もいた」と当時の様子を振り返る堀手さん。
「ほかにも、電気が突然勝手に消えたり、誰もいないはずの空間から色んな種類の音が鳴り響いてきたり、テレビのチャンネルがいつも勝手に切り替わるようになりました。それで、
何チャンネルにしていても絶対NHKになるんです。チョイスが渋いな……と思いながら、素人なので『混線してるんだ』とか、『電波の乱反射かも』と、なにかしら思いつく理由をこじつけていました」
にわかには信じがたい話ですが、恐怖にさらされた時、人は意外とどうでもいいことを考えてしまうものなのかもしれません。
「幽霊が原因だと考えたら、怖くて部屋にいられませんから。絶対に違うと自分に言い聞かせていました」と語る堀手さん。でも、不可思議な現象は日ごとにパワーアップしていきました。