「パラスポーツは“ただのスポーツ”になってほしい」パラ水泳選手が語る未来
8月24日、東京2020パラリンピックが開幕する。パンデミックの中での開催は、大会の意義を問い直すきっかけになるだろう。リオ大会で注目され、5つの日本記録を持ちながら、惜しくも代表を逃したパラ水泳の一ノ瀬メイ選手が、パラスポーツの可能性を語り尽くした。
※編集部追記(8/25、20:30)
初出のタイトル「パラリンピックはなくなればいい」について、一ノ瀬選手のtwitterで、意図と違うとのご指摘があり、タイトルを変更致しました。
リオパラリンピックの元日本代表で、5つの日本記録を持つパラスイマーの一ノ瀬メイ選手は、先天性右前腕欠損症で生まれつき右腕が短い。その端整なルックスから「水のプリンセス」の愛称を持つが、自らの熱い思いを“まっすぐな言葉”で発信し続けてきたことで、たびたびメディアに取り上げられてきた。
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「障害の『害』が平仮名なのが嫌い。害やからよくないやろ、で平仮名にする。私からしたら、障害は本人じゃなく社会やから。平仮名に直して、勝手に消さんといてほしい」
時に、強気な言い回しで「障がい者」と社会の関わり合い方について多くの問題提起を行うなど、一ノ瀬選手は競技場の外でも闘い続けてきた真のアスリートと言っていいだろう。
東京パラは「多様性と調和」「共生」を理念に掲げる。そんな今大会での表彰台を目指し、最終選考までの2年間はスポーツ大国・オーストラリアに練習拠点を移し、鍛錬してきた。
だが、今回は惜しくも代表入りを逃してしまった……。彼女はどう受け止めているのだろうか。
「もちろん悔しかったけれど、それまでの練習を振り返って『ああしておけばよかった』という後悔が一つもなかった。もっと落ち込むと思っていたんですが、意外にも清々しかったし、ポジティブな感情が湧いてきたのは驚きでしたね。
オーストラリアでは、素晴らしい練習環境に恵まれました。向こうの水泳連盟は一つで、その中に五輪のヘッドコーチとパラのヘッドコーチがいて、連盟内で五輪とパラが分かれています。選手の側もジュニアの頃から健常者とパラの選手が同じ試合に出ていて、メニューによっては一緒に練習することもある。子供の頃から健常者と障がい者が一緒にいるのが当たり前なので、『障がい者差別はいけない』と教育する必要がそもそもないんです。
一方、日本では、日本水泳連盟と日本パラ水泳連盟があり、試合も基本的に別だし、選手登録も別。初めから健常者と障がい者の線引きがなされている」